2025年09月19日

TOEFL 2026年改訂:リーディングセクションを解説

2026年より改訂されるTOEFL試験リーディングセクションに関する解説記事です。新設される課題の概要、適切な解答へ導くためのアプローチ、さらに試験準備に有効な学習リソースについて解説します。


以前の投稿でも書いたように、Educational Testing Service(ETS)が2026年1月21日から実施するTOEFLの変更は、テスト内容をほぼ全面的に刷新するものです。ETSは練習用のリソースを一部公開しており、今後さらに追加される予定ですが、現時点ではテスト準備のために利用できる教材は限られています。この記事ではテスト全体の概要に続き、各新課題への取り組み方や、新しいTOEFLのリーディングセクションに備えるためのリソースをどこで見つけられるかについてヒントを紹介します。

Complete the Words

このセクションは「穴埋め」問題の一種で、C-Testと呼ばれる形式です。この形式では、学術的な文章の中に未完成の単語が含まれています。具体的には、文中の2語に1語が未完成になっており、欠けている文字は入力欄(_ _ _)で示されます。

一見すると簡単そうに見えますが、この問題では語彙や語形成、コロケーション(単語の結びつき)だけでなく、文法、文脈の理解、さらにはアカデミックライティングのスキルも要求されます。

この問題は、ある意味では受験者が「知っているか、知らないか」にかかっています。しかし、正答率を高めるためには次のようなステップを踏むとよいでしょう。

まず、段落全体にざっと目を通して語彙の知識を呼び起こします。そのうえで、不完全な単語を空所補充問題として扱います。すぐにわかる単語もありますが、そうでない場合はその単語がどの品詞(名詞・動詞・接続詞など)に当たるのかを特定し、不完全な単語を隠してみることで候補が絞れます。そして、単語が与えられた文字数と一致すれば、そのまま答えとして書き込めます。文字数が一致しない場合は、与えられた文字から始まる同義語を考えてみるとよいでしょう。

類似の練習問題は、Duolingo English Test の「Practice」セクションにある 「Read and Complete」 で見つけられますし、C-Testの問題集はオンライン検索でも入手可能です。また、大規模言語モデルを使って、この形式の問題を作成・採点することもできます。さらに、関連はしているものの少し異なる形式の練習ができるアプリ 「Clozemaster」 も、通勤時間などのすきま時間に取り組むにはおすすめです。

Duolingo English Test: https://englishtest.duolingo.com/
Clozemaster:https://www.clozemaster.com/

Read in Daily Life

このセクションでは、英語圏における日常生活に関わる短い文が出題されます。例えば、電子メール、お知らせ、広告、Webサイトの抜粋、または予定表などです。それぞれの課題文につき2~3問の選択回答式問題があります。この問題の目的は、受験者が実生活に即した読み取りスキルを持っているかどうかを測ることです。ですから、くだけた言い回しや画像なども組み合わさったような日常的な資料に対する読解力が必要になります。

受験者はまず、資料のイラストや文章からその資料がどんな種類のものか把握する必要があります。資料の目的は何か、何かの情報か、お知らせか、販売広告なのか。正しくここを特定することで、その資料の目的を問う質問に回答できるでしょう。また、細かい情報に関する質問に答えるために、抑えるべき重要なポイント(日時、場所、人名)に気を配りながら読み進めていきます。

TOEICテストを受験した経験がある方ならば、このセクションは馴染みがあるでしょう。新しいTOEFLに向けた準備をする場合、このセクションの対策として、TOEICテストのパート7の練習問題が活用できます。

Read an Academic Passage

このセクションは現在のTOEFL iBTリーディングセクションに似ていますが、文章が短く問題数も少ないです。ETSが公開した資料から判断すると、過去よりトピックも分かりやすくなっているようです。問題形式の多くは過去のTOEFLリーディングセクションで見られた馴染み深いものですが、要約問題や複数回答を選択する問題は見られません。詳細はまだ完全には明らかではありませんが、先行セクションの成績に基づき、このセクションの難易度は自動的に調整されます。

受験者はこのセクション内で問題間を行き来できます(ただし、一度完了すると戻れません)。そのため、解答を始める前に問題全体を確認し、解答の順序を決めておくとよいでしょう。文章内の異なる部分から情報を結びつける必要がある問題タイプは時間がかかるため、それらを最後にまわし、先に語彙問題や文章中に直接記載されている情報に関する問題など、短時間で解ける問題から解きます。情報を結びつけるタイプの設問で、それらの問題から得た知識を活用できるでしょう。解答の順序を決めたら、選択肢を見る前に本文から根拠を探しながら答えてみるとよいでしょう。この作業を終えたら、選択肢を確認し、明らかに正しくないものを除外します。最後に、本文の根拠と選んだ答えを照らし合わせながら、最も適切な答えを選びます。各問題について、コンピュータが問題文と関連する本文を同時に表示するため、これらの手順を素早く進められるはずです。

TOEFL iBTリーディングセクションの過去問題集は、このセクションの練習に依然として有効です。なぜなら、多くの問題形式が現在も使用されているからです。これまでのTOEFLでは幅広いテーマの文章が扱われてきましたが、とくに歴史に関する文章が多い傾向にありました。一方で、ETSが現時点で公開しているサンプル問題では心理学の概念を扱った文章が中心となっています。そのため、リチャード・E・ニスベット(Richard E. Nisbett’s )のMindware: Tools for Smart Thinking(タイトルの印象よりもかなり学術的な文体です)やScientific Americanの「Psychology」のページのようなオンラインリソースを読むのも役立つでしょう! 適応型テストという新しい試みのため、平易な文章が特定のテーマに偏り、難易度の高い文章が別のテーマに偏るのかどうかはまだ不明です。ただし、現在のTOEFLのリーディングセクションを基に考えると、『History Today』や『National Geographic』などのサイトからも、TOEFL対策にちょうど良いレベルで幅広いテーマの文章を読むために適していると言えます。

Psychology:https://www.scientificamerican.com/psychology/
History Today:https://www.historytoday.com/
National Geographic:https://www.nationalgeographic.com/

おわりに

この記事を書いている時点では、2026年版TOEFLのリリースまでまだ数か月あります。そのため、現行のTOEFL iBTと比べると、学習用リソースはかなり限られています。そこで今回は、各セクションの準備に役立つ外部リソースをいくつか紹介しました。
今後、公式教材が公開されれば、ここで紹介した学習方法に加えてとても有効な選択肢となるはずです。次回はリスニングセクションの攻略ガイドをお届けしますので、ぜひご期待ください!


この記事の記者

ルケ・ベリボは、帰国子女アカデミーにおいてカリキュラム開発を担当しています。カナダ出身で、英語とフランス語のバイリンガル環境に育ち、成人後に第三言語として中国語を習得しました。2008年にフランスで語学教育のキャリアを開始し、その後、オーストラリアを含む5か国で指導経験を積みました。オーストラリアでは応用言語学およびTESOL(英語教授法)における修士号を取得。専門分野は、言語評価、アカデミック英語、教育理論、カリキュラム設計です。