2025年11月14日

東京大学、新学部カレッジ・オブ・デザインで日本のグローバル教育を拡充

東京大学は、2027年秋、70年ぶりに新学部「カレッジ・オブ・デザイン(College of Design)」を開設します。英語によるカリキュラムと柔軟な出願ルートを導入し、日本でも広がりつつある総合型選抜により、国内の学生にもグローバルな学びの選択肢を提供します。


2012年にスタートした PEAK(Programs in English at Komaba) は、東京大学として初めて 全課程が英語で提供される学部課程として開設されました。このプログラムは、優れた学業成績と国際的な視野を持つ意欲的な学生を国内外から集めてきましたが、規模は限定的で、年間の入学者数はわずか30名程度でした。世界的な才能を引きつけることには成功したものの、PEAKの小規模さとリソース集約型の構造は拡大を困難にし、東京大学はより大規模な国際教育の統合方法を再考せざるを得ませんでした。

カレッジ・オブ・デザイン(College of Design)の開設

13年間に及ぶ検討の結果、東京大学では約70年ぶりとなる新学部設置が提案されました。2025年4月に新学部「カレッジ・オブ・デザイン(College of Design)」の構想とビジョンが初めて発表されました。そして、2027年秋には、記念すべき第1期生を迎え入れる予定です。

出典:東京大学 College of Design(カレッジ・オブ・デザイン)公式ウェブサイト

 

新学部は5年間の学士・修士課程で、授業は英語で実施され、年間約100名(国内と海外ほぼ半数ずつ)の学生を受け入れます。藤井輝夫総長の指揮のもと、東京大学および海外の教育者が連携し、「デザイン」を単なる芸術的な分野ではなく、思考と探究の方法としてとらえる教育を推進します。このプログラムの目的は、気候変動、デジタル・トランスフォーメーション、高齢化社会など、世界的な課題に対して、創造的かつ学問を超えた観点から解決策を描けるリーダーを育成することにあります。

Visit the homepage of the College of Design at the University of Tokyo at here

東京大学「カレッジ・オブ・デザイン(College of Design)」についての詳細は、こちらからご確認ください。

2通りの出願ルート:国内・国際

構想発表後、出願方法やカリキュラムの概要も明らかになりました。7月の発表によると、出願は英語で受け付け、海外からの受験がより簡便かつ低コストになるだけでなく、国内のインターナショナルスクール出身者にとっても出願しやすい仕組みとなります。

現時点では、2種類の出願方法が想定されています。「大学入学共通テスト」を利用するルート(ルートA 仮称)と、国際的な標準化試験を利用するルート(ルート
B 仮称)です。どちらのルートでも、成績証明書、推薦状、そして英語または日本語で書かれたエッセイによる書類審査が行われます。ルートBでは、ACT、SAT、国際バカロレア(IB)、国際Aレベルなどの試験が想定されています。ルートAで出願する場合は英語能力試験のスコア提出が求められますが、ルートBの場合、出願者の教育背景によってはその提出が免除される場合があります。正式な対象試験の一覧はまだ公表されていませんが、TOEFL、IELTS、あるいは近年人気が高まっているDuolingo English Testなどが含まれる可能性が高いと考えられます。概要資料によれば、一部の海外出願者についてはオンライン面接が実施される予定であることも記載されています。

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日本の大学入試に広がる「総合型選抜」

出典:東京大学 College of Design(カレッジ・オブ・デザイン)公式ウェブサイト

 

カレッジ・オブ・デザインが提案している入学者選抜方法は、日本の高等教育全体で起きている大きな変化を反映しています。日本の大学は、試験の点数だけでなく、エッセイ、面接、学校での活動記録など多面的な観点から学生を評価する「総合型選抜(AO入試)」へと移行しつつあります。これは北米やヨーロッパの多くの大学では長年一般的な方法でしたが、日本では学生の好奇心、創造性、異文化コミュニケーション能力を評価する必要性が高まる中で、ようやく広がり始めています。文部科学省もこの方向性を後押ししており、日本最古の国立大学である東京大学が新学部の入試選抜でその理念を実践することは象徴的な出来事といえます。

日本における国際教育

進学先を検討している家庭にとって、これはまさに好機と言えます。歴史的な円安が続く中、海外留学の費用はますます高騰しています。こうした状況で、英語で学べる日本の大学教育プログラムは、魅力的な選択肢として注目を集めています。日本に滞在することによる安全性、利便性はそのままに、比較的手頃な費用で国際的な学習環境を得られるためです。東京大学が大きなリソースを投入する背景には、日本の高等教育が自らの未来を再定義しよういう強い意思があります。それは、複雑な社会・環境課題への対応に向けて、学生を育成する大学運営における世界的な変化を反映し、ますます国際的、学際的、そして協働的な教育へと発展していく未来です。

東京大学「カレッジ・オブ・デザイン」についての詳細は、こちらから ご確認ください。


この記事の記者

ブレット・コーベットは帰国子女アカデミーの高等部アドバイザーとして、KAを帰国子女やバイリンガル生徒にとって大学進学準備の拠点となるよう尽力しています。また、教師、主任教師、そして元KA Plusプログラム責任者として、KAの各教室とオンラインプラットフォーム全体で指導に携わりながら、KAのカリキュラム開発にも貢献してきました。