2026年04月27日

TOEFL 2026!変更点と受験者・教育機関への影響を解説

2026年1月、ETSはTOEFL試験をほぼ全面的に刷新した新バージョンを発表しました。刷新のプロセスは、ETSで比較的迅速かつ静かに進められました。本記事では、試験を理解するうえで重要となる3つのコンセプトと、それらが受験を検討している人々および導入を検討している教育機関にどのような影響を与えるかについて解説します。

“生徒募集!KAインターナショナルスクール”

2026年1月、ETSはTOEFL試験をほぼ全面的に刷新した新バージョンを発表しました。刷新のプロセスは、ETSで比較的迅速かつ静かに進められました。筆者は別の記事で各タスク形式について解説し、新しいTOEFL iBTのセクション別ガイドも順次公開しています。本記事では、試験を理解するうえで重要となる3つのコンセプトと、それらが受験を検討している人々および導入を検討している教育機関にどのような影響を与えるかについて解説します。

 

アダプティブ方式

TOEFLにおける最も大きな変更の一つが、アダプティブ方式への変更です。これにより、リーディングとリスニングの両セクションが2段階構成になります。最初の段階は「ルーティング(全受験者共通)」です。ルーティングの目的は、受験者を2つのモジュールのいずれかに振り分けることにあります。ここでは全員に同じ問題が出題され、次の段階よりも長く設定されています。オンライン上の情報では、この段階でおよそ60%の正答率であれば、次のステージではより難易度の高いモジュールに振り分けられ、それ未満であればより難易度の低いモジュールに割り当てられると言われています。

受験者にとって、アダプティブ方式のテストは試験時間の短縮と、より効率的な学習を可能にします。試験時間が短くなる理由は、ルーティングで特定されたスコア範囲内で受験者のレベルを測定するために必要な設問数が少なくなることにあります。また、初期のレポートによると、難易度の低いモジュールと高いモジュールでは出題されるタスクの種類が異なるため、受験者は自身が想定するスコア帯に応じて出題されやすいタスク形式に集中して対策できるようになります。例えば、リーディングセクションで難易度の低いモジュールに入ると予想される受験者は、ルーティング後に再びアカデミックな文章を読む可能性は低くなります。一方、難易度の高いモジュールに入ると予想される受験者は、アカデミックな文章の出題を想定することになります。

モジュール Reading Section(リーディングセクション)  Listening Section(リスニングセクション) Routing (ルーティング:全受験者共通) ・Complete the Words (単語を完成させ  る)  ・Read in Daily Life (short) (日常生活   に関する文章を読む:短) ・Read in Daily Life (long)(日常生活に  関する文章を読む:長) ・Read an Academic Passage (アカデ  ミックな文章を読む) ・Choose a Response (音声を聞いて応  答を選ぶ)  ・Listen to a Conversation (会話を聞く) ・Listen to an Announcement (アナウン  スを聞く) ・Listen to an Academic Talk (アカデミ   ックな講義を聞く) 難易度:低 ・Complete the Words (単語を完成させ  る)  ・Read in Daily Life (日常生活に関する  文章を読む) ・Choose a Response (音声を聞いて応   答を選ぶ)  ・Listen to a Conversation (会話を聞く) ・Listen to an Announcement (アナウン  スを聞く) 難易度:高 ・Complete the Words (単語を完成させ  る)  ・Read an Academic Passage (ア   カデミックな文章を読む) ・Choose a Response (音声を聞いて応   答を選ぶ)  ・Listen to a Conversation (会話を聞く) ・Listen to an Announcement (アナウン  スを聞く) ・Listen to an Academic Talk (アカデミ  ックな講義を聞く)
一方で教育機関にとっては、アダプティブ方式は重要な意味を持ちます。低スコアの受験者は、スコアを得るためにこなす「アカデミック系」タスクの数が少なくなるからです。これは、アカデミックな読解力・聴解力を重視する教育機関にとっては重要な観点です。ただし同時に、「アカデミック」と明示されていないタスクで測定される能力の価値も見過ごすべきではありません。実際、大学での学習や生活の成功には、講義の理解や教科書の読解、図表の要約だけでなく、より幅広い能力が必要とされます。
 

統合型タスク

もう一つの大きな変更は、2026年版TOEFLから統合型ライティングおよび統合型スピーキングタスクが廃止されたことです。これらのタスクは、異なるメディアから得た情報を要約・統合する能力を測定するものでした。例えば統合型スピーキングタスクでは、受験者はまず告知文を読み、その後会話を聞き、最後に告知文の内容と話者の反応を口頭でまとめる必要がありました。 統合型タスクは難易度が高く、実際の大学の授業に近いタスクと考えられてきました。実際に言語を運用する際には4技能の複数を同時に使うからです。しかし、単一技能のタスクと組み合わせて実施されない場合、統合型タスクは他の技能の得意・不得意に影響され、スコアに偏りを生む可能性があります。例えば、リーディングやリスニングの弱さが原因で、スピーキングやライティングのスコアが下がるケースもあり得ます。また、これらのタスクは以前のTOEFL iBTでは形式が長年ほぼ固定されていたため、回答のテンプレートを作成することも可能でした。 一方、アカデミックディスカッション(Academic Discussion)のライティングタスクは、複数の技能を組み合わせることは少ないものの、こうした問題点を回避しています。このタスクはTOEFL 2026でも採用されており、受験者は掲示板形式の複数の「投稿」を読み、それらを理解・要約し、自分の意見を短く記述する必要があります。大学の授業では、学生にまさにこのようなタスクが求められることがよくあります。そのため、このタスクはより実践的で、大学の授業で必要とされる高度な総合力を評価するのに適しています。私の大学生活の経験から見ても、他の多くの英語力テストにあるような説得力のある短いエッセイよりも、大学生活により近いと感じます。実際、アカデミックディスカッションは2023年に導入され、TOEFLの独立型ライティングタスク(Independent Writing)に代わるものとなりました。
統合型タスクから得られるマルチモーダルな印象を重視する教育機関にとっては、今回の廃止は残念に感じられるかもしれません。その場合、他の試験の検討も有効です。例えば、Pearson Test of English Academic、Oxford Test of English Advanced、Trinity College LondonのIntegrated Skills in Englishなどは、統合型タスクを多く含みつつ、単一技能タスクも併用することで「技能間の影響」を補正しています。日本ではTOEFLほど普及していませんが、統合的な言語能力評価を重視する場合には検討に値します。
Pearson Test of English Academic Link: https://www.pearsonpte.com/pte-academic
Oxford Test of English Link: https://elt.oup.com/feature/global/oxford-test-of-english/advanced\
Trinity College London Integrated Skills in English Link: https://www.trinitycollege.com/qualifications/english-language/ISE

スコア方式

 
2026年版TOEFLでは、スコア方式も変更されました。これは、スコアを受け入れる教育機関が試験結果をより理解しやすくするためであり、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)の6段階スケールに対応する設計となっています。各セクションのスコアは6点満点で算出され、それらの平均値によって総合スコア(6点満点)が決定されます。以下は、新旧スコアの総合スコアの対応関係の概要です。完全な対応表はETSのウェブサイトでご覧いただけます。 新 6 5.5 5 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 旧 114+ 107+ 95+ 86+ 72+ 58+ 44+ 34+ 24+ 12+ 0+
Link: Understanding TOEFL Scores
https://www.ets.org/toefl/test-takers/ibt/scores/understand-scores.html 
TOEFLは上記の新しい6点満点のスケールでスコアを算出しますが、スコアレポートには120点満点換算のスコアも併記されます。ただし、このスコアは6段階スコアを平均化し、さらに丸め処理を行った上で換算されたものであるため、従来の試験で提示されていたスコアよりも精度が低い点に留意する必要があります。実際の換算結果は以下のようになります。
新 6 5.5 5 4.5 4 3.5 新 120 118 110 100 90 80 65
現在の120点満点スケールにおいて、得られる総合スコアは上記に限られています。総合スコア6は常に118点となります。教育機関は、総合スコアの使用が、平均化によって受験者の実際の英語力を誤って示す可能性がある点にも注意する必要があります。例えば、ある受験者が2つのセクションで4.5、残り2つで5.0を取得した場合と、別の受験者が3つのセクションで5.0、1つで5.5を取得した場合、両者は同じ総合スコアになります。さらに、両者とも120点満点換算では100点が付与されますが、上記リンクのセクション別換算表によると、後者は100点台半ばに相当し得る一方で、前者はそれよりかなり低い水準に相当する可能性があります。このような丸め処理の影響により、新試験では総合スコアのみを用いて評価することは推奨しにくいと言えます。また、新旧のTOEFLは測定している言語能力が異なるため、結果を直接比較する際には注意が必要です。

受験者・教育機関への影響

今回大きく刷新されたTOEFLは、従来とは全く異なる試験と言えるものであり、さまざまな関係者に影響を与えます。受験者にとっては、試験時間が短縮され、引き続き世界中で広く認められる試験である一方、新しい試験であるため、過去の試験に比べて対策教材はまだ十分に揃っておらず、試験対策業界も現在対応を進めている段階です。ただし、公式・非公式の教材は徐々に入手しやすくなっており、これらの課題は今後解消されていくと考えられます。 また、新しいTOEFLは、受験料がより安価で、さらに試験時間も短いDuolingo English Testと多くの点で類似しています。志望する教育機関がこの試験を認めている場合、対策教材が無料で公式サイトに統合されている点も含め、受験を検討する価値があります。 Duolingo English Test Link: https://www.englishtest.duolingo.com/ 教育機関にとっては、新しい試験内容を慎重に検討し、自校のニーズにどの程度適合しているかを確認することが重要です。新しいTOEFLがどのように英語力を評価しているのか、またスコアが何を意味しているのかを理解することで、今後、教育機関の期待と志願者の実態とのミスマッチを減らすことができます。ETSはTOEFLブログで、新試験の変更理由などに関する興味深い研究を公開していますが、多くの変更点については解釈が委ねられている部分もあります。 TOEFL Blog Link: https://www.ets.org/toefl/blog/toefl-speaking-research.html 一方で、新しいTOEFLは、教育機関が自校の語学試験ポリシー全体を見直す機会ともなります。現在、語学試験の選択肢は多様化しており、IELTS、Duolingo、Pearson、Oxford、Trinity Collegeなどの試験についても検討する価値があります。これらの試験は、それぞれ開発者によって研究や設計思想が詳細に公開されているため、教育機関はより広範な試験の市場を理解することで、言語テスト全般についての理解も深まります。 さらに、オンライン試験の普及により、教育機関は試験会場の確保状況による制約を受けることが少なくなります。これにより、地域の試験会場の有無により、その地域で主流の試験を選択する必要がなくなるというわけです。その結果、教育機関はより多くの試験を受け入れることで教育プログラムへのアクセスを広げると同時に、自校の目的に最も適した試験を選択できるようになります。
更新後のTOEFLに関する以前の記事に関しては以下のリンクより参照いただけます。 ・スコアに関する記事 ・リーディングに関する記事
ぜひこちらも合わせてお読みください。


この記事の記者

ルケ・ベリボは、帰国子女アカデミーにおいてカリキュラム開発を担当しています。カナダ出身で、英語とフランス語のバイリンガル環境に育ち、成人後に第三言語として中国語を習得しました。2008年にフランスで語学教育のキャリアを開始し、その後、オーストラリアを含む5か国で指導経験を積みました。オーストラリアでは応用言語学およびTESOL(英語教授法)における修士号を取得。専門分野は、言語評価、アカデミック英語、教育理論、カリキュラム設計です。