2026年05月22日

プリンストン大学、133年続いた伝統を廃止―AIを使った不正行為の増加を示すデータを受けて

プリンストン大学の「名誉規定」は、この名門大学で1893年から続いてきた伝統であり、学生が無監督で試験を受けることを認めてきました。しかし、AIによる不正行為への懸念の高まりや、学業不正に関する報告の増加を受けて、学生と教員から変更を求める声が上がり、教員たちは先日、133年間守られてきたこの伝統を廃止することを投票で決定しました。

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プリンストン大学の名誉規定

 
プリンストン大学の名誉規定は、この名門大学で1893年から続いてきた伝統です。この制度のもと、教授陣は学生を信頼して無監督で試験に臨ませます。学生は、不正行為を行わないこと、そして規定違反の疑いがある場合は報告することを誓います。 プリンストン大学の名誉委員会は次のように説明しています。 1893年、プリンストン大学の高い学術的誠実性の基準を守るための教員と学生との合意として、名誉規定が制定されました。名誉規定の規約の文言は時代とともに進化してきましたが、信頼や独創的な学術研究への献身という根底にある精神は、大学コミュニティ全体に浸透しています。 プリンストン大学では、期末試験、中間試験、小テストを含むすべての授業内試験が名誉規定のもとで実施されます。学生は、試験中に不正な利益を与えたり受けたりしようとしていないことを名誉に懸けて宣誓します。その代わりに、試験室には監督する教員はいません。また、学生は、規定違反の疑いのある行為をすべて委員会に報告する責任を負います。
出典: https://honor.princeton.edu
この制度は133年間、同大学の誇りとされてきました。しかし、AIに関する懸念により、その状況は変わりつつあります。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、 非常に多くの学部生や教員が変更を求めたことを受け、教員会は5月11日に、夏期試験からすべての対面試験に監督の配置を義務づけることを投票で決定しました。

データが示す、AIに関する懸念の高まり

プリンストン大学の名誉委員会は毎年、学術的誠実性への違反の疑いに関する統計を公表しています。これらの報告書により、2015年から2025年にかけてAIの不正使用が著しく増えたことがわかります。 2015年秋期~2020年春期の報告書には、AIに関する記述は一切ありません。しかし、最新の報告書(2020年秋期~2025年春期)では、「生成AI」が「外部素材の不正使用」のカテゴリーに該当することが明記されています。 また、両報告期間を比較すると、追加調査や懲戒処分を要する事例が増えていることが明らかになりました。

報告件数 ヒアリングに進んだ件数 違反認定件数 2015年秋期 ~2020年春期 33 13 7 2020年秋期 ~2025年春期 33 24 16
出典: https://honor.princeton.edu/statistic-reports
当初の報告件数は変わらず同じだったものの、ヒアリングへの移行に値する妥当性を認められた報告件数はほぼ倍増しています。このことから、報告事例のうちヒアリングや追加調査に値すると認められる割合が大幅に(39%から73%に)増加したことがわかります。その後、規定違反の責任があり懲戒処分に値すると委員会が認定した事例数は2倍以上に増加しています。 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、実際にはさらに多くの不正行為が報告されていない可能性も高いと考えられているとのことです。これは、ソーシャルメディアで反発を受けるリスクがあるため、学生たちが同級生を報告することに以前より消極的になっているためです。 学生新聞The Daily Princetonianが卒業生予定者に対して実施した2025年の調査によると、2025年、禁止されているにも関わらず課題にAIを使用したと認めた学生の割合は27.7%に達しました。さらに、調査対象者のうち44.6%は、同級生が名誉規定に違反していることを知りながらも報告しなかったと回答しています。 こうした状況を踏まえると、教員と学生の双方からこの変更が求められ、支持されたのは当然のことだと言えるでしょう。 プリンストン大学の決定と学生たちの姿勢は、同じく長年続く方針をもつ大学でのより広範な傾向に沿ったものです。スタンフォード大学は、学生から反対の声があったにもかかわらず、2023年から対面試験での試験監督導入を実験的に開始しました。そして2026年4月に正式導入を認める投票が行われた際には、委員会は「以前よりも多くの学生がこの方針を支持しているように見える」と述べています。 AIツールがますます効果的で利用しやすくなるにつれ、学術的誠実性と高い学術水準を維持するために方針を見直したり変更したりする教育機関が増えていくことでしょう。

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