[インタビュー] チャールズ・カヌーセン氏が新著『Pathways ―バイリンガルが歩んだ道』を語る ― 日本でバイリンガルに育った12人のサクセスストーリー

Pathways Charles Knudsen Interview 1
このインタビューでは、帰国子女アカデミー創設者のチャールズ・カヌーセン氏が、日本の若者たちがバイリンガルになることに成功した12通りのさまざまな方法について描いた新著『Pathways ―バイリンガルが歩んだ道』と、ご家庭に向けたヒントについて語ります。

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はじめに

Pathways Book Cover

Pathways ―バイリンガルが歩んだ道

6月9日、Global KA HoldingsのCEOであり、帰国生やバイリンガル生のための日本有数のプログラム「帰国子女アカデミー」の創設者でもあるチャールズ・カヌーセン氏による新著『Pathways ―バイリンガルが歩んだ道』が発売されます。本書では、日本人の若い日英バイリンガル12名へのインタビューを収録し、それぞれが異なる方法で二言語習得を実現した過程を紹介しています。

Pathways ―バイリンガルが歩んだ道 は、6月9日よりAmazonおよび一部書店で販売されます。

【Amazon】Pathways ―バイリンガルが歩んだ道

バイリンガリズム(ふたつの言語を使いこなす能力)の大切さを広めるべく、バイリンガルとして世界で活躍する12人の学生たちの「歩み(pathways)」をインタビューを交えて紹介し、どうすればバイリンガルになれるか、バイリンガルになったらどんなことができるのか、など、バイリンガルが発揮できるさまざまな強みを紹介する。

IST編集部はチャールズ氏にインタビューを行い、彼がバイリンガルの若者たちとの会話から何を学んだのか、なぜ日本の英語教育をめぐる危機感が高まっていると考えているか、そして子どもにこの道を歩ませることを検討している保護者が知っておくべきことは何かについて話を聞きました。

IST編集部: 新著『Pathways ―バイリンガルが歩んだ道』について教えてください。どんな内容の本ですか。

チャールズ・カヌーセン:そうですね、帰国子女アカデミーには、成長の過程でバイリンガルとなり、今は大学生活やキャリアで成功している生徒がたくさんいます。私が出会う多くの親御さんから、どうすれば自分たちも子どもをバイリンガルに育てられるのかと尋ねられます。実際のところ、その方法は一つだけではありません。たくさんの方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。誰にでも開かれているわけではない道もあります。両親が日本で働いている場合、誰もが帰国生になることはできません。そこで、日本で子どもたちがバイリンガルになったさまざまな方法と、彼らの歩みに続く方法に関するリソースを共有したいと考えたのです。

私は12人の若者にインタビューしましたが、彼らはバックグラウンドも違えば、人生のどの段階でバイリンガルになれたかも違います。彼らは、自分がどうやってバイリンガルになったのか、そしてそのことが自分の人生にどんな影響を与えたのかを語ってくれました。

この本をインタビュー集として執筆しようと決めた理由は、実際に日本での生活を経験している学生たち自身を通してストーリーを伝えたかったからです。通常の日本の学校制度の中で育ったにしろ、海外に行ったにしろ、インターナショナルスクールに通ったにしろ、あるいはその組み合わせを経験したにしろ、彼らは皆、日本人です。彼らは皆、この社会の一員であり、その声はもっと聞かれるべきだと思っています。

読者に学生たちの物語から刺激を受けてもらいたかった一方で、実践的な情報やサポートも提供したかったので、各種リソースも掲載しています。日本で現実的に選択できる国際教育・英語教育のほぼすべての選択肢を網羅しました。最も費用を抑えられる「家庭での独学」から、最も費用がかかる海外の寄宿学校まで取り上げています。

本書から得られるヒント

IST編集部: 彼らのストーリーに何か共通点はありましたか。

チャールズ・カヌーセン:家族が関心を持っていたということです。全体としてみると、ほぼすべての家庭が、子どもの人生のさまざまな段階で、何らかの形で子どもの英語教育に力を注いでいました。保護者がそれを主な優先事項としていたケースもあれば、保護者が子どもをその方向へさりげなく導いているケースもありました。

興味深いことに、インタビュー対象者の多くは、最終的に自分の中の意欲に火をつけたのは親ではなかったと話していました。きっかけはインターナショナルスクールの友人だったり、たとえば、たまたまアメリカンスクールの子どもたちがたくさんいるボーイスカウトアメリカ連盟に参加したことだったりしました。

IST編集部: 親にとって、英語がどのように価値あるものになり得るのかを子どもが体験して自分自身のモチベーションを育てられるような状況に子どもを置くことが大切だということでしょうね。

チャールズ・カヌーセン:そうですね。ちょっとしたことなんです。子どもを海外旅行に連れて行った保護者もいましたが、ずっと一緒に過ごすのではなく、世界中から来たほかの子どもたちと一緒に参加するデイキャンプに参加させていました。たとえそこで英語を流暢に話せるようになって帰ってきたわけではなくても、子どもは基本的なコミュニケーションスキルを学び、英語がいかに有意義なスキルになり得るかを知ったのです。

ある人は、高校生のときにモチベーションをもつようになりました。両親が、幼なじみの通うインターナショナルスクールの卒業イベントに連れて行ったんです。彼は、友人がそこで誰とでもいとも簡単に英語で話している姿を目にしました。自分は英語を学校で長年勉強してきたのに一言も理解できなかったので、大学の間に英語力を伸ばすことや留学することを目標にしました。

多くの場合、この「ちょっとしたこと」は、英語を話す他の子どもたちと一緒に過ごせる環境に子どもを置くことです。それは日本ではより難しいですが、機会はあります。それについては本の中で語っています。

IST編集部: 読者が驚きそうなストーリーはありましたか。

チャールズ・カヌーセン:あゆかという女の子がいました。彼女は幼いときに、ある日、英語を完璧に話せるようになりたいと思い、英語だけで考えようと決めたんです(笑)。

第11 章: 髙瀨あゆか(Ayuka Takase)

チャールズ・カヌーセン:彼女は英語の動画を何度も何度も聞き、自分でもそれを繰り返して、動画とまったく同じように聞こえるまで練習していたんです。

中学生の頃に初めて帰国子女アカデミーに参加したとき、彼女はとても緊張していました。彼女は帰国生ではないし、同年代の若者たちと一緒に実際に英語に関わったこともありません。すべて独学でした。ところが、彼女は最終的にクラスでトップになりました。今もし彼女と話せば、帰国生か英語のネイティブスピーカーだと思われるでしょう。彼女がほぼ完全に自力で成し遂げることができたことは、注目に値します。

IST編集部: 他にも読者が驚くようなことはありますか。

チャールズ・カヌーセン:そうですね、国際教育に関心のあるご家庭は、何歳でインターナショナルスクールに通い始めるのが適切なのか疑問に思うかもしれません。

インターナショナルプリスクールに通い、その後日本の小学校に進むというルートをたどる家庭もあります。この方法はうまくいくんですが、家庭で英語を勉強しない場合は別です。というのも、そうなると3か月以内に英語力のほとんどを失ってしまうからです。

他には、子どもを2年生や3年生、場合によっては4年生になってからインターナショナルスクールに入れる家庭もあります。一部のインターナショナルスクールは、英語を第二言語として学ぶ生徒(ESL生)をそこまで遅い時期に受け入れませんが、保護者がそうするのは、まず子どもに漢字を学ばせ、日本語で一定の習熟度を身につけさせ、その後でインターナショナルスクールへの入学を目指させたいと考えるからです。


梨紗子さんの進路は妹の佑香さんとは面白いくらい対照的です。佑香さんはまずインターナショナルスクールでバイリンガルとなる最初の一歩を踏み出し、そのあと日本の学校で学びました。これに対し梨紗子さんは日本の小学校に入学したあとに、インターナショナルスクールで教育を受けました。ふたりの経験を並べてみると、同じ家庭で育っても、バイリンガルとなるまで、学業において成功をつかむまで、そして人生を充実したものにするまでの道のりがこれほどまでに違うことがよくわかります。

Pathways ―バイリンガルが歩んだ道
第10 章: 隅梨紗子(Lisako Sumi)


 

チャールズ・カヌーセン:保護者が驚くかもしれないことの一つは、子どもの日本語の読み書き能力が、日本の学校に通う子どもたちと同じスピードでは発達しない可能性があるということです。少しだけ余分に努力する必要があります。インターナショナルスクールは日本語を教えるうえで良い仕事をしてくれるかもしれませんが、一日や一週間の時間には限りがあります。ですから、インターナショナルスクールというルートを選ぶ家庭では、週末や放課後の時間に、日本語にもう少し力を注ぐ必要があるかもしれません。

それは各家庭が決めなければならない個人的な判断です。本の中で、私は家庭に対して何が正しい、何が間違っているとは言っていません。ただ、さまざまな経験と結果を示そうとしているにすぎません。もちろん、本書の目的上、できるだけ良い成果につながった事例を紹介するようにはしています。

IST編集部: なぜ今、この本を書こうと思ったんですか。

チャールズ・カヌーセン:数年前までは、私の主な関心は帰国生やインターナショナルスクールの生徒たちにありました。しかし、ますます多くの生徒たちがバイリンガルになることに真剣に取り組むのを見てきましたし、自分の子どもに与えられる贈り物としておそらくこれ以上のものはないと理解している家庭がますます増えているのも見てきました。ただ、4~5年海外で暮らすというのは誰でもできることではありませんから、このバイリンガルという贈り物をあげるための別の方法を見つける必要があります。今では良い選択肢がたくさんあるので、それらをすべて一か所にまとめたいと思いました。

また、本当の意味での危機感もあります。実際、日本全体の英語レベルは20年前と比べて低下しています。

これは、私が「ビジョン2035」で取り組もうとしていることの一環でもあります。ビジョン2035は、日本における英語の教え方や扱い方を変えるために約1年前に始めた取り組みです。私が思うに、最も大きく欠けているのは危機感です。正式には、中学校や高校では英語は数学や国語と同じく主要教科ですが、実際には美術や音楽のような選択科目に近い扱いです。生徒が何かを学べたらそれは素晴らしいが、学べなくてもそれほど大きな問題ではない、そうした空気があります。

【ビジョン2035 】: 日本の将来を見据えた英語能力の向上

私たちは、グローバル化した世界における日本の未来は、次世代が活躍するための言語ツールを提供することにかかっていると信じています。そこで私たちは、日本の英語教育環境を変革する大胆な計画「ビジョン2035」を始動します。

しかし、英語を学ぶことには実際のメリットがあります。高い英語力をもつ新卒者は同世代の人たちよりも給与が30〜40%高く、その差はキャリアの後半になるほど広がっていきます。日本の人材紹介会社は、バイリンガル人材の紹介1件あたり、他国の人材紹介会社の2倍~3倍の報酬を得ています。それは、日本ではバイリンガルがそれほど珍しいからです。

ですから、この本は、バイリンガルになることは多くの異なるPathway(道)を通じて実現可能であり、真剣に取り組む価値があるということを家庭に示す試みでもあります。

おわりに

IST編集部: 他に、読者にこの本から受け取ってほしいメッセージはありますか。

チャールズ・カヌーセン:私はどの生徒にも「バイリンガルでよかったと思いますか」と尋ねたんです。その道のどこかで、誰かが彼らのために決断をしています。海外に移住する、この子をインターナショナルスクールに入れる、この学校では1年間の留学が必要である、といったことです。「その決断を自分のためにしてくれてよかったと思いますか」と尋ねました。

「英語を話せなければよかった」と言った人はいませんでした。日本の人々とも、世界の他の多くの人々ともコミュニケーションを取れる能力をもっていることを、誰も後悔していませんでした。

IST編集部: お時間をいただき、本当にありがとうございました。

チャールズ・カヌーセン:ありがとうございました。

【Amazon】Pathways ―バイリンガルが歩んだ道

バイリンガリズム(ふたつの言語を使いこなす能力)の大切さを広めるべく、バイリンガルとして世界で活躍する12人の学生たちの「歩み(pathways)」をインタビューを交えて紹介し、どうすればバイリンガルになれるか、バイリンガルになったらどんなことができるのか、など、バイリンガルが発揮できるさまざまな強みを紹介する。

帰国子女アカデミーについて

2004年に設立された帰国子女アカデミー(KA)は、帰国生やバイリンガル生のための日本有数の放課後プログラムです。20年以上にわたり、KAは一流大学やグローバルなキャリアで活躍する16,000人以上の卒業生のネットワークを築いてきました。

また、KAは英語学習の道のりを歩み始める国内生向けのプログラムRising Starsも運営しています。KAはGlobal KA Holdings, Inc.の教育ブランドのひとつです。

詳しくは、kikokushijoacademy.com および globalka.comをご覧ください。

この記事の記者

ジェレマイヤ・イェ

ジェレマイヤ・イェは、帰国子女アカデミーにおいて、国際教育・バイリンガル教育向けの教材および教員研修プログラムの開発を率いています。カリフォルニア大学サンディエゴ校で言語学を専攻し、第二言語習得を中心に学びました。生徒と教育者の双方に向けた教材・リソースの開発を通じて、日本の教育の質の向上を目指しています。