思春期に見えてくる、言語のつまずきーインターナショナルスクールのMiddle Schoolで言語評価がすすめられるとき

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Middle Schoolで言語評価がすすめられるのは「問題がある」からではなく、「静かな困難」が表面化した信号かもしれません。目立たない「手のかからない子」ほど、実は理解や発信に苦手があります。この時期だからこそ、本人が自分の課題と向き合える力があります。評価は問題診断ではなく理解のため。家庭・学校・専門家がチームになり、「できない」を特別視せず穏やかに支援することで、お子さんは自信を持って前に進めます。

最近、インターナショナルスクールのMiddle Schoolの先生方から、お子さんの言語評価のご依頼をいただく機会が増えているように感じています。

言語やコミュニケーションの発達のつまずきは、一般的には幼少期に気づかれることが多く、必要に応じて早期の支援につながります。それではなぜ、Middle Schoolという時期に、評価がすすめられるのでしょうか。今回は、その考えられる背景と、評価について知っておいていただきたいことをお伝えしたいと思います。

Middle Schoolで言語評価が検討されるとき

背景の一つに、近年、社会全体で発達特性への理解が広がってきたことが挙げられると思います。インターネットやSNSを通じて情報が共有されるようになり、お子さんだけでなく、大人になってから初めて発達特性に気づき、診断を受ける方も増えていると言われています。これまで「個性」と捉えられてきた特性が、本人の生きづらさにつながっていたと理解されるようになってきました。学校現場でも、お子さん一人ひとりの特性に、より目を向けようとする姿勢が高まっているように感じます。

もう一つは、インターナショナルスクールという環境ならではの事情です。家庭での日常会話では流暢に話せていても、Middle Schoolで求められる語彙の習得、文の構成、抽象的な概念の理解、自分の考えをまとめて他者に伝えることといった、より高度な言語の力が英語で必要になったとき、初めて言語発達のつまずきが見えてくることがあります。ただ、インターナショナルスクールという環境だからこそ、それが言語発達そのもののつまずきなのか、第二言語の学習途中で見られる一般的な兆候なのかを見極めることが、容易ではないのも事実です。

見えにくいサインと、「様子をみましょう」という選択

特に「手のかからない子」と見られてきたお子さんほど、サインは見過ごされやすい傾向があります。教室の雰囲気をよく読み、目立たないように過ごし、指示にも従っている。家庭でも大きな困りごとは見えない。けれども、本当に内容を理解しているか、自分の考えを発信できているか。そこに、静かな困難が隠れていることがあります。

お子さんの発達に何らかの気がかりが見え隠れしたとき、日本では「もう少し様子をみましょう」という判断がなされやすい傾向があるように、私は感じています。「もう少し成長を待てば、自然と追いつくのではないか」という気持ちからなのだと思います。しかし一方で、「様子をみる」期間が長くなるうちに、お子さんが必要としている支援にたどり着くタイミングも見逃してしまうリスクもあります。Middle Schoolで評価の話が出てきたとき、それは、これまで「様子をみてきた」何かが、表面化したサインである可能性があります。

評価をすすめられたら、新しい扉として

学校の先生から言語評価をすすめられたとき、最初は戸惑いを感じる保護者の方も多いと思います。「うちの子の発達に何か問題があるのだろうか」と、不安を抱かれるのは自然なことです。しかし、その提案を、お子さんを理解するための新しい扉として受け止めていただきたいと感じています。

専門家による評価は、お子さんの「できないこと」を見つけるためのものではありません。日本語と英語の両言語で、得意なこと、苦手なこと、そして苦手の改善につながるサポートや取り組みは何かを丁寧に見ていくものです。バイリンガル環境特有の特徴と、もともとの発達特性とを見極めながら得られた具体的な理解が、ご家庭、学校、専門家がそれぞれの立場でお子さんを支えていく出発点になります。

Middle Schoolという時期だからこそ

Middle Schoolという時期には、幼少期にはない大きな利点があります。
幼少期と違い、お子さん自身が自分のことを客観的にとらえ、「何が得意で、何が苦手なのか」を考え、語ることができるようになっています。

ただ、この年齢だからといって、お子さんが自然に自分の課題と前向きに向き合えるわけではありません。むしろ思春期は、自分と他者を比較して落ち込みやすい時期でもあります。

「自分だけがうまくついていけていないのではないか」

という思いが芽生えると、苦手と向き合うこと自体が、つらい体験になってしまうこともあります。

だからこそ、周囲の大人がどう関わるかが、お子さんの受け止め方を大きく左右します。

スピーチセラピーや学校でのサポートを、肯定的なものとして伝える。「できない」ことを悪いことのように扱わない。一方で、本人を傷つけたくないという思いから、苦手があることに気づかないふりをすることも、避けたいことです。Middle Schoolのお子さんは、ご家族が思う以上に、自分の苦手に気づいています。むしろ、苦手があることを、特別なことでも恥ずかしいことでもなく、家族で一緒に向き合っていけるものとして、穏やかに話せる空気を作ることが大切です。

「苦手と向き合うことで、こんなことができるようになる」と、お子さんにわかる形で、取り組みの先にある可能性をお子さんに伝えながら、「何が難しい?」「どうすればうまくいきそう?」と一緒に考える時間をもつ。

こうした関わりに支えられて、お子さんはサポートを「やらされるもの」ではなく「自分のためのもの」として受け取り、自分の苦手と前向きに向き合っていくことができます。本人が納得して取り組むからこそ、支援はより深く根づき、自信にもつながっていきます。

家庭・学校・専門家のチームで

お子さんの成長を支えるのは、ご家庭だけではありません。学校の先生は、学校という場でお子さんと毎日向き合い、学習を支えています。専門家は、評価を通じてお子さんの発達の様子を把握し、必要に応じた支援につなげます。

それぞれの場所から見えてくる視点を持ち寄り、「チーム”〇〇”」として支えていくことで、お子さんは、複数の大人に支えられている安心感の中で、自分の課題に取り組むことができます。

インターナショナルスクールの多様性が支える未来

インターナショナルスクールには、さまざまな言語背景、文化背景を持つ子どもたちが集まっています。一律的な教育ではなく、お子さん一人ひとりのニーズに合わせた多様な教育を大切にしている学校が多いように感じます。

だからこそ、お子さんの言語的ニーズだけでなく、発達的なニーズにも目を向けようとする先生方に出会うことが少なくありません。

おわりに

Middle Schoolの先生から言語評価をすすめられたとき、戸惑いがあるのは自然なことです。しかし一方で、Middle Schoolという時期は、お子さん自身が自分の課題と向き合い、未来に向かって歩み出していける、力強い時期でもあります。ご家庭、学校、専門家がチームになって、お子さんがその一歩を踏み出せるよう、共に支えていきましょう。

この記事の記者

二宮 彩

二宮彩は、障害と神経多様性のインクルージョンおよび国際教育を専門とするプライベートインクルージョンコンサルタントです。国内外の学校や教育リーダーに対し、バイリンガルやサードカルチャーキッズを含む複雑なニーズを持つ学習者を支援する方法について助言を行っています。異文化間での豊富な経験を活かし、家庭や教育者が異文化環境での子育てや教育の複雑さを乗り越える手助けをしています。また、日本に住む外国人や駐在員家庭を支援する専門知識を持つ医療・福祉の専門家と家庭をつなぐ新たな取り組みも進めています。