近年の中学入試では、一般入試で理科や社会の代わりに英語を導入する方式が広がりを見せています。
「英語入試」、「グローバル入試」とも呼ばれるこの新しい方式は、帰国生を対象とした「帰国生入試」とは異なります。
未就学や低学年で帰国して受験資格を得られない生徒、国内インターナショナルスクールに通う生徒、二重国籍などのバイリンガル生徒など、多様なバックグラウンドを持つ子どもたちが英語を生かして受験に挑戦できる仕組みです。
さらに、東京都の規定では帰国生枠を利用できない生徒でも、神奈川・千葉・埼玉・茨城といった東京都外の地域では「帰国生入試」を受験できる学校があります。
では実際に、中学入試にはどのような方式があり、どんな条件や特徴があるのでしょうか。
ここからは「帰国生入試の概要」から「グローバル入試」まで、順を追って整理していきます。
1. 帰国生入試とは?
帰国生入試は、保護者とともに一定期間以上を海外で過ごした生徒を対象とする特別な入試制度です。この入試の主な特徴は、海外経験や英語力を重視することです。多くの学校で英語の筆記試験、エッセイ、面接が課され、帰国生ならではの言語力や表現力が評価されます。英語筆記の難易度は学校によって幅があり、英検準2級程度から1級相当までを目安とする学校もあり、日常的なコミュニケーション能力にとどまらず、論理的思考や表現を支えるアカデミックな英語力が求められるのも特徴です。 また、学校によっては国語や算数の試験を併せて課す場合もあり、帰国生に配慮した内容に調整されるケースもあれば、進学校や人気校といった世間的に評価の高い学校では、一般入試と同等レベルの問題が課されるケースも少なくありません。実施時期が一般入試より早いのも特徴です。2025年度入試からはすべての帰国生入試が11月20日以降に実施されることとなりました。こうした特徴を持つ帰国生入試ですが、実際に誰が受験できるのか、その条件を見てみましょう。
2. 帰国生入試の受験資格
受験資格は大きく分けて3点あります。
・海外在住年数:1年以上、2年以上など学校ごとに規定。
・帰国からの経過年数:帰国後2〜3年以内が一般的。
・在籍校の種類:現地校、インターナショナルスクール、日本人学校など。
東京都私立中高協会の申し合わせでは、原則として「海外在住1年以上、帰国後3年以内」が受験資格の目安とされています。ただし、「帰国後3年以内」とする起算点については明確な規定があるわけではなく、解釈や運用は各学校の裁量に委ねられています。ホームページや募集要項には具体的な記載がない場合もありますが、多くの学校では実際に説明会で補足説明や詳細な解説を行っており、さらに個別相談や問い合わせ窓口を設けていることも少なくありません。したがって、要項やホームページの情報だけで判断せず、必ず学校に直接確認することが望まれます。とはいえ、この条件では、たとえ現地で生まれても未就学や小学校低学年で帰国した生徒は、帰国から3年以上が経過しているため対象外となり、海外在住経験があっても受験できないケースが生じます。
しかし一方で、上記の申し合わせはあくまで東京都の私立中学校に適用されるものであり、神奈川・千葉・埼玉といった東京都外の学校には拘束力がありません。つまり、帰国生入試の条件がより柔軟に設定されている学校が存在します。
3. 東京都以外で帰国生入試を受けられる学校
以下の学校では、東京都の帰国生の定義に当てはまらない生徒でも、帰国生入試に挑戦できる場合があります。代表例としては、次の通りです。
・洗足学園(神奈川)
・公文国際(神奈川)
・桐光学園(神奈川)
・聖光学院(神奈川)
・開智所沢(埼玉)
・渋谷教育学園幕張(千葉)
・市川(千葉)
・東邦大学付属東邦(千葉)
・茗溪学園(茨城)
ただし、帰国生入試の受験資格は一律ではなく、各学校によって独自に定められています。必ず募集要項を確認し、不明点があれば説明会や個別相談で直接確認することが大切です。
4. 「帰国生じゃなくても英語受験」が可能に
海外在住経験がない生徒でも、英語を活かして受験できる学校は年々増えています。こうした仕組みは「英語入試」や「グローバル入試」と呼ばれ、首都圏ではすでに約140校(2025年度時点)が導入しています。
入試形式の例
・英語+国語・算数(もっとも一般的)
・英語+面接・エッセイ
・英語の各種資格試験の級・スコア+国語・算数
難易度や出題レベルは学校によって幅があります。広尾学園や三田国際科学学園は、入学後に帰国生と同じコースに入るため、試験の傾向・難易度は帰国生入試と同じです。一方、慶應湘南藤沢中等部は一般入試と帰国生入試で共通の問題を使用しており、帰国生であっても一般生と同じ水準の国語・算数の力が求められます。英語は英検準1級相当の難易度とされており、一般生には非常に難易度が高い設定です。また、サレジアン国際や芝国際など、英検など外部の資格試験を利用して、英語筆記試験を免除または点数化する制度も、近年私学の間で広がっています。2026年度からは頌栄女子学院も「英語利用入試」を導入予定であり、資格活用型の入試は今後ますます注目されそうです。
5. まとめ
これまで海外在住経験のある帰国生に限られていた「英語を強みにできる入試」の選択肢は、グローバル入試を導入する学校の増加によって大きく広がり、今では多様な入試方式が定着しつつあります。ただし、受験資格や試験内容、難易度は学校によって異なりますので、必ず募集要項を確認し、学校説明会などで情報収集をしましょう。英語力を生かせる受験の選択肢が広がる今こそ、お子さまのバックグラウンドに合った入試方式を見極め、計画的に準備を進めていくことが重要です。