2026年02月25日

変化する帰国枠入試における算数の役割 ー 主体的な学習姿勢が育てる帰国生の力

近年の帰国枠中学入試では、英語力を前提としながらも、国語と算数が合否を左右する重要な科目として位置づけられる傾向が強まっています。本稿では、英語資格による試験免除制度の広がりや、英語で得点差がつきにくくなっている現状を踏まえ、算数の出題内容や難度がどのように変化しているのかを整理しました。あわせて、学校ごとに異なる試験形式や求められる力に着目し、帰国生一人ひとりの学習背景や到達度に応じた学習設計の必要性を示しています。さらに、クラスメイトと学ぶ過程の中で、算数を「できるようになる」だけでなく、「学ぶこと自体を前向きに、楽しさを伴って捉えられるようになる」経験が、帰国生ならではの主体的な学習意欲を高めることにもつながる点を論じています

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はじめに

 

帰国生の中学受験において、英語力が依然として重要な強みであることに変わりはありません。しかし近年では、受験科目に国語・算数が加えられたり、3教科のバランスを総合的に見る学校が増えたりと、入試で重視される内容に変化が見られます。学校によっては、英語・算数の2科目入試を選択できる場合や、英語の試験を英語資格で免除し、国語・算数のみで受験できる入試方式も導入されるようになってきました。

今回は、こうした変化を踏まえ、帰国枠入試における「受験算数」に焦点を当て、その重要性についてお話しします。また、受験の枠にとどまらず、帰国生に算数を教えるにあたって大切なポイントを併せて解説します。

帰国枠入試における算数の位置付けと傾向

これまでは、英語1科目受験が中心であったり、算数が課されていても基礎的な内容の定着を確認する程度であったりと、算数は「英語で差がつかなかった場合の補助的な判断材料」として位置付けられることが多くありました。

しかし近年では、英語の得点に差がつきにくくなっていることや、英語資格による試験免除制度の導入などを背景に、算数が「合否を左右する重要な判断材料」へと変化しつつあります。それに伴い、算数の出題レベルも全体的に難化しており、十分な対策を行わなければ対応が難しい問題も増えてきました。そのため、帰国生であっても中学受験用の算数の学習が不可欠となっています。

かつては「帰国枠入試は一般入試より易しい」と捉えられることもありましたが、近年では進学校を中心に、一般入試と同等レベルの問題が出題されるケースも増えています。また、中学入試全体の受験者数が増加し、塾通いが一般化する中で、受験生一人ひとりの平均的な学習量も増加しています。その結果、問題の難度を上げなければ差がつきにくくなり、入試問題はさらに難化するという循環が生まれています。

こうした状況を踏まえると、問題の難易度に関わらず、できるだけ早い段階から、密度の高い学習を行うことが重要であると言えます。

一方で、帰国生は本帰国の時期や海外での学習環境がそれぞれ異なり、受験勉強を始めるタイミングや基礎学力の定着度にも大きな差があります。そのため、一人ひとりの学習状況や能力を正確に把握し、志望校に向けたゴールを見極めた上で、適切な学習スピードと指導内容を設定することが不可欠です。

 

算数の学校別難易度や受験形態について

前述の通り、帰国枠入試における算数のレベルは年々上がっており、学校によっては一般入試と変わらない難度に達しています。算数の入試問題は、大きく以下の5つのグループに分けることができます。 最難関レベル
問題の難度が最も高く、深い思考力を問う問題が中心となります。
学校例:聖光学院 難関レベル
問題自体は難しいものの、最難関校と比べるとやや取り組みやすく、テキストで学んだ内容を応用できれば対応が可能です。
学校例:海城、洗足B、都市大付属、攻玉社、三田国際科学ISC、慶應義塾湘南藤沢 など 英語が決め手となる難関レベル
英語でのアドバンテージが前提となりますが、算数でも一定の得点が求められます。ただし算数の難度自体は高く、最低限の得点を取ることも容易ではありません。
学校例:渋谷教育学園渋谷、市川 など 高得点が求められる中堅レベル
算数の問題は基礎・基本を中心とした内容ですが、受験者数が多いため、高得点での勝負となります。
学校例:広尾学園AG、広尾小石川AG、山脇 など 中堅レベル
基礎・基本事項の定着が重視されます。
学校例:芝国際、開智日本橋 など また、英語で算数が出題されるケース、試験時間が短いケース、記述問題を含むケースなど、試験形態も多様です。限られた時間の中で、基礎・基本が定着しているか、さらにそれを活用して考え抜く力があるかが、1回の試験で問われることになります。そのため、学校ごとの特徴を踏まえた対策が不可欠です。

志望校とレベルに合ったコース提供

入試レベルや求められる力、受験形態が学校ごとに異なる中で、さらに受験生一人ひとりの学習背景や理解度も異なります。そこで、個々の状況に応じた学習方法を提供することが重要となります。

中学受験算数の学習は、一般的に小学4年生から始まり、5年生までに一通りの内容を学習します。6年生では、5年生までに学んだ内容を用いて応用問題に取り組み、視野や思考力を広げていきます。帰国生の場合、本帰国のタイミングによって学習開始時期はさまざまですが、5年生・6年生からでも無理なく追いつけるよう、Catch-Upコースを用意しています。

また、通年で学習するCore Classではレベルを2段階に分け、それぞれのレベルに適した問題を徹底的に演習します。6年生では、帰国枠入試で実際に出題された過去問を用いた実践的な演習を行い、基礎の確認とともに多様な視点から問題を捉える力を養います。これにより、志望校の選択肢を広げることが可能になります。

さらに、英語で算数が出題される学校や最難関・難関校への対策として、Special Courseも設けています。広尾学園AGや三田国際科学ICの対策としては、Juken Math HackathonやHiroo Math Intensiveを実施し、過去の出題傾向を踏まえた問題に英語で取り組みます。最難関・難関校では、限られた時間の中でどれだけ多くの問題に対して的確な発想ができるかが問われます。そのため、通常のテキストより一歩踏み込んだ問題を扱う「難関校向け算数一行問題講座」や「最難関校向け算数講座」も用意しています。

入試直前には、学校別のCountdownコースを実施し、過去問や模擬試験を通して最終確認を行います。

おわりに ― 帰国生に受験算数を教えるにあたって大切なこと

 
帰国枠入試は、一般入試と比べて受験時期が早く、学習期間も限られています。その一方で、問題の難度は年々上がり、高い学力が求められるようになっています。だからこそ、一人ひとりに合った学習方法で、効率的に学習を進めることが合格への近道となります。 しかし、どれほど充実したカリキュラムや環境を整えても、帰国生に寄り添う姿勢がなければ、実りある学習は実現しません。帰国生の多くに共通する長所は「主体的な学習意欲」です。 私たちは、試験当日に最後までえんぴつを止めることなく、問題に向き合い続けられること、そして問題そのものを楽しんで解けることを目標に指導を行っています。問題を「楽しい」「おもしろい」と感じられることが、学力を伸ばす大きな原動力になるからです。 また、同じようなバックグラウンドを持つ仲間とともに学ぶことも、大きな成長につながります。「受験はチーム戦」と言われるように、互いの努力を認め合い、励まし合う経験は、学習意欲をさらに高めます。 受験勉強を通して、学力の向上だけでなく、人とのつながりや支え合う姿勢を育むこともできます。多くの卒塾生は進学先で再び同じクラスになることも多く、中学受験を終えた後も、互いに支え合う関係が続いていきます。 受験算数が、主体的な学習意欲と仲間とのつながりを深めるきっかけとなることを、私たちは願っています。

この記事の記者

清野友佳は、帰国子女アカデミーにおいて受験算数プログラムの拡充に取り組むとともに、生徒の受験の選択肢を広げられるような指導に努めています。現在は、帰国生に求められる算数力を育成するため、テストや教材の作成にも携わり、帰国枠入試に特化した学習の提供に尽力しています。