2026年04月13日
東京都は、2030年までに高度外国人材を5万人に増やす目標を掲げ、生活インフラの核となるインターナショナルスクールの誘致を強化しています。現状、都内では入学待ちが発生しており、海外大学進学に強い学校や知名度の高い学校の供給が不足しています。最大の課題である用地確保に対し、都は都有地や廃校の活用、デベロッパーとの連携による街づくりを推進しています。また、進出を検討する事業者へは、市場分析から広報まで幅広く支援するコンサルティング窓口を設置しています。金融・資産運用特区の指定も受け、行政手続き支援などの生活環境整備と併せ、世界最高峰の教育環境を備えた「国際金融都市」の実現を目指しています。
東京都産業労働局国際金融都市推進担当課長 藤村 宏治氏に聞く、インターナショナルスクール誘致の最前線。
「子供を通わせる学校に空きがない」——。
日本への赴任を検討する海外の人材が直面するこの深刻な課題に対し、東京都が総力を挙げた解決策を打ち出しています。
インターナショナルスクールを単なる教育施設ではなく、都市競争力を左右する「不可欠なインフラ」と位置づける都の真意はどこにあるのでしょうか。
東京都の藤村課長に期待される教育モデルや具体的な支援策、そしてデベロッパーとの連携による新しい街づくりの可能性についてお聞きしました。
日本校開校を検討するインターナショナルスクール関係者必読です。
編集部 村田: 本日はお時間をいただきありがとうございます。
東京都は今、インターナショナルスクール(以下、スクール)の誘致を進めています。
まず、その政策的な背景から伺えますか。
藤村課長:背景は大きく分けて二つあります。
一つは「国際金融都市・東京」として、2030年までに高度外国人材を5万人に増やすという目標です。もう一つは、令和6年6月に国から「金融・資産運用特区」の指定を受けたことです。
村田: 5万人というのは非常に大きな数字ですね。
藤村課長: はい。そのためには「英語でビジネスができる」のはもちろん、「グローバルスタンダードな都市」でなければなりません。
私たちは国際金融都市推進課という部署ですが、実は高度外国人材を呼ぶためには、ビジネス面だけでなく「生活環境」の整備が不可欠だと考えています。
その中核にあるのが、お子さんの教育環境、つまりスクールの整備なのです。
村田: 具体的には、どのような産業分野の方々を想定されているのでしょうか。
藤村課長: 金融関係はもちろんですが、研究者、教授、ITエンジニアなど、いわゆる高度専門人材を広く想定しています。
2030年の5万人という目標は高いものではありますが、確実にその方向へ動いています。
村田: そうした方々にとって、スクールの有無はどの程度重要なのでしょうか。
藤村課長: 重要な要素です。
実は海外の高度人材に聞くと日本は治安が良いという点では非常に評価が高い。
しかし、いざ赴任するとなると「子供を預けるスクールに空きがない」「言葉の壁がある」といった問題に直面します。実際にいま都内のスクールでは入学待ちが一部で発生しており、供給が足りていません。
年間の学費が高額になっても、それに見合う質の高い教育を求めているご家庭が確実にいるのです。
▽ 東京都は、都内に暮らすインターナショナルスクールの保護者の声を集めたYoutubeも公開しています。
村田: 現場ではどのような学校が求められていると感じますか。
藤村課長:カリキュラムや進学実績に優れたスクールの需要が特に高いですね。
都として特定のタイプに絞っているわけではありませんが、知名度は重要だと考えています。海外の保護者がひと目見て「この学校なら安心だ」と思えるような、知名度のある学校の進出は強い引きになります。
東京都のインターナショナルスクールのポータルサイトは、都内のインターナショナルスクールを検索することができる。
村田: 寮のあるボーディングスクールやSTEM特化型などについてはどうでしょうか。
藤村課長: もちろん歓迎です。
実際、低年齢層のプリスクールは比較的多いのですが、中高等部、また特に海外大学への進学に強いスクールへのニーズは高いと感じています。
村田: 地価が高騰する中で、都内での「用地確保」がスクール側にとって最大の難所のようです。
藤村課長: 都としても用地や施設の確保は課題だと考えており、 全方位で可能性を探っています。
具体的には、都有地の活用を検討したり、各区市町村に対して廃校など利用可能用地の情報がないか働きかけを行ったりしています。
村田: 廃校の活用は、建築費が高騰している今、事業者にとっても魅力的ですね。
藤村課長: 廃校は、既存の建物をリノベーションできれば更地から建築するよりも早く開校ができます。
また、街づくりという観点では、デベロッパーとの連携も強化しています。
民間の大きなプロジェクトの中にスクールを組み込んでいく動きを支援しています。
東京都は、インターナショナルスクール開校を考える教育関係者向けにサポート事業も始めました。
村田: 東京都では、進出を検討する学校へのコンサルティングも実施されていますが、その内容について教えてください。
藤村課長:国際的なネットワークや教育業界への深い知見を有する民間事業者に委託して支援しています。
開校したいと考えるスクール側に対して、初期の相談から市場分析、収益試算などのフィジビリティスタディ、さらにはパートナー探しや広報支援まで幅広く対応しています。
村田: 対象は海外のスクールだけでしょうか。
藤村課長: 既存のスクールの拡大や新しく学校事業を始めたい学校法人、さらには教育事業に参入したいデベロッパーさん等も対象です。
「興味はあるが、日本の法制度や市場がよくわからない」という段階からでも、まずはサイトからお気軽にお問い合わせいただきたいですね。
村田: 最後に、この記事を読んでいる海外の教育関係者や、日本への赴任を考えている方々にメッセージをお願いします。
藤村課長: 東京都は今、教育環境だけでなく、生活環境全般のサポートを強化しています。
銀行口座の開設や役所の手続きへの支援など、言葉の壁を感じさせない「コンシェルジュ」のようなデスクも設置しています。東京は治安が良く、都心から1時間も行けば奥多摩のような豊かな自然もあります。
安心・安全で、かつ世界最高峰の教育が受けられる都市を目指しています。ぜひ期待して東京に来ていただきたいです。
海外の教育機関の皆様も東京というマーケットの可能性を信じて、ぜひ一緒にインターナショナルスクールの充実に取り組んでいきましょう。
村田: 東京都の並々ならぬ決意が伝わってきました。本日はありがとうございました。
東京都の公式インターナショナルスクールのポータルサイトは、保護者、教育関係者、開校を検討してる機関に向けて情報を発信しています。
この記事の記者
インターナショナルスクールタイムズの編集長として、執筆しながら国際教育評論家として、NHK、日本経済新聞やフジテレビ ホンマでっかTV、東洋経済、プレジデント、日本テレビ、TOKYO FMなど各メディアにコメント及びインタビューが掲載されています。
プリスクールの元経営者であり、都内の幼小中の教育課程のあるインターナショナルスクールの共同オーナーの一人です。
国際バカロレア候補校のインターナショナルスクールの共同オーナーのため国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了しています。
インターナショナルスクールの誘致の背景についてお聞きした東京都産業労働局国際金融都市推進担当課長 藤村 宏治氏。