2017年07月16日

【コラム】4ヶ国と国交断絶。カタールのインターナショナルスクール業界は、安定成長を続けられるか?

サウジアラビア、UAEなど4カ国と国交断絶にある中東のカタール。秋田県ほどの大きさの国は、資源開発、イスラム金融、さらに観光業で発展をしてきた。しかし、今回の国交断絶により、同国のインターナショナルスクール業界にも影響が懸念される。編集部では、カタールのインターナショナルスクール業界の動向について考察してみた。


中東のカタール

中東のカタールは、人口約210万ながら、一人当たりのGDPが約6万ドルの富裕国だ。
(日本は一人あたりのGDPが約3万8千ドル)
中でも、カタール国籍はわずか約15%にすぎない。
外国人労働者が支えている国でもある。

その収入の多くを石油・液化天然ガスがまかなっている。

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サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、そしてバーレーンの中東4カ国は5日、カタールとの国交を断絶すると発表した。

編集部は、サウジアラビアをはじめとする国交断絶がカタールのインターナショナルスクール業界にどのような影響を及ぼすのかを考察した。

資源開発、イスラム金融が同国のインターナショナルスクールを支える。

カタールは、イスラム金融を伸ばすために規制緩和を進めており、その結果、海外からの金融機関系である外資系企業が増加した。

従来の資源開発の外国人駐在員に加え、金融機関系の駐在員も増加した。
これに伴い同国ではインターナショナルスクールが増加した。

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現在、同国にあるインターナショナルスクールは47校。

編集部の調べでは、カタールにはインターナショナルスクールが47校あり、イギリス系が多い。
アメリカン、スイス、ドイツなど各国系のスクールも揃っている。

また、イスラム系のインターナショナルスクールが多いのも特徴だ。

カタール航空とUAEのエミレーツ航空は、空でも豪華な設備、その他レベルの高いサービスを競っている。

 

サウジアラビア、UAE、エジプト、バーレーンの4カ国と国交断絶の状況にある中で、今後、イスラム金融センターとして同国のポジションが低下すると考えられる。

同国のインターナショナルスクール需要の多くを生み出した資源開発、イスラム金融の停滞とともに、同国のインターナショナルスクールの需要も低下する可能性が高い。

同国は、観光業も力を入れてきたが、2022年に開催予定のワールドカップにも暗雲が立ち込める。

その一方で隣国、UAEなどにイスラム金融、観光業などが一部流れ、インターナショナルスクールの増加に繋がると考えられる。

急成長したカタール。その代償

中東のインターナショナルスクールもこの10年で急激に増加した。
その多くは、資源価格の高騰、イスラム金融の発展が影響しており、それらを担う外国人駐在員の増加によるものだ。

しかし、今や資源価格は2014年後半から半値まで下がっている。

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今回の国交断絶がどのようなプロセスを歩むのか。

その動向によっては、同国の外国人駐在員が他国へ移動または自国へ戻り、インターナショナルスクール業界が壊滅的な被害を受ける可能性がある。

国内も他人事ではない

移動性が高い外国人駐在員を対象とした教育機関のインターナショナルスクール。

カタールのインターナショナルスクール業界が直面する課題は、近年、インターナショナルスクールが急増したUAE、シンガポール、マレーシアなどにとって他人事ではないだろう。

10年単位で世界各地で起こる金融危機、自然災害、紛争は、予想ができない。
そのためカタールの事例からスクール側は、守りの経営を予測しなければならない。

日本も不測の事態に備えよ

国内のプリスクールからインターナショナルスクールを含め、金融危機、自然災害、紛争時にどのような守りの経営手法を取るのか。

補助金をほとんど受けていない国内のインターナショナルスクール業界にとって、生徒数の激減は、収入に直結する。

年間予算と人件費を含めた固定費比率の高い業界のため、次の経済危機に備えたスクール運営が求められる。

次に世界的な金融危機が起きた場合、プリスクールなど小規模なスクールは大きな打撃を受けるだろう。

 

教育機関として継続していくための努力がスクールオーナーに必要になってくる。

現在の安定的な経営環境の中だからこそ、次の危機に備えた財務基盤の強化、スクール同士の提携など万が一への備えを策を準備しておきたい。

唯一の救いは、世界的にインターナショナルスクールの需要が5年で2倍に増えと予想されるためゼロサムゲームではないことかもしれない。


この記事の記者

インターナショナルスクールタイムズの編集長として、執筆しながら国際教育評論家として、NHK、日本経済新聞やフジテレビ ホンマでっかTV、東洋経済、プレジデント、日本テレビ、TOKYO FMなど各メディアにコメント及びインタビューが掲載されています。

プリスクールの元経営者であり、都内の幼小中の教育課程のあるインターナショナルスクールの共同オーナーの一人です。

国際バカロレア候補校のインターナショナルスクールの共同オーナーのため国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了しています。