2016年12月06日

インターナショナルスクールの先生になるには?

インターナショナルスクールの先生になるには?これまでインターの教員採用は、知られていませんでした。しかし、グローバル教育に注目が集まるとともにインターの教育に興味を持つ方が増え、教員を目指す方も増えてきました。そこで、インターナショナルスクールの先生になる方法をまとめました。


先生が足りない?!インターナショナルスクールの悩み

インターナショナルスクールが増えて困ったこと。それは、「先生が足りない」という事実。
文科省が推進する国際バカロレア200校計画も、英語で教えられる先生の採用が課題となりました。

 

国内に小中高と連続した教育課程を持つインターナショナルスクールは、タイムズの調べで約50校あります。
インターナショナルスクールはそれぞれ教育理念からカリキュラムを開発しているため、どのようなカリキュラムを採用しているのかによって必要とされる教員免許や経歴も大きく違います。

例えば、アメリカ系のインターナショナルスクールとインド系のインターナショナルスクールでは、カリキュラムも違い、求められる教員免許も違います。

アメリカ系のインターナショナルスクールの場合、アメリカの各州共通カリキュラムCommon Coreを土台に教えられる各州の教員免許を持っている方が有利。

その一方でインド系のインターナショナルスクールでは、インドおよび英国系の教員養成講座を修了している方が有利です。

どの国の教員免許を持ち、さらに+αの研修や経験があるのか?がさらに重要になります。

 

これまでインターナショナルスクールの教員採用は、あまり表に出てきませんでした。
しかし、グローバル教育に注目が集まるとともにインターナショナルスクールの教育に興味を持つ方が増えました。

また、国際バカロレアの認定校が増え、日本の一条校とインターナショナルスクールに人材の行き来が生まれました。

そこで、インターナショナルスクールの先生になるには?を英語で教える国内の小中高の教育課程があるインターナショナルスクールを前提にまとめました。

なお、プリスクール、キンダーガーテンは求められる免許が大幅に違います。そこで別の機会に書きたいと思います。

インターの先生になる条件

インターの先生になるには、いくつかの条件があります。重要な条件をピックアップします。

1、ネイティヴまたはそれに近い英語レベル
2、英語圏の教員免許

では、実際に分析してみましょう。

1.ネイティヴまたはネイティヴに近い英語レベル

インターナショナルスクールの多くが、英語を教授言語としています。
そのため英語で探究的な学びを指導する必要があります。
そこで必要となってくるのが英語力。

ネイティヴに近い英語力なくして、インターナショナルスクールの教員にはなれません。

小学校、中学校、高校とどこの教育課程で教えるのか、で大きく異なりますが、インターナショナルスクールで指導したい場合、英語力は必須です。

 

2.英語圏の教員免許

インターナショナルスクールの先生になるには、英語圏の大学で取得した教員免許があると教員としてキャリアをスタートさせやすいといえます。

アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏の大学の教育学部を卒業した教員がインターナショナルスクールには、多くいます。

 

写真は、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学のFaceBookページより
カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の教育コースは、国際バカロレアもオプションで学べる。

インターナショナルスクールの教員のなかには、母国で教員歴をスタートさせて、途中からインターナショナルスクールの教員になるケースも多々あります。

どのようなキャリアでインターの教員となるか、をあくまでも参考例としてイメージしてみます。

アメリカ人がインターの教員になるケース

アメリカ人のカリフォルニア州生まれ育ち。アメリカの大学で理工系の学部を専攻。同時に教員課程も修了。
卒業後、エンジニアとして活躍するが、数年後、教員として地元の高校に勤務。

エンジニア時代に仕事で海外に行ったこともあり、海外のインターナショナルスクールの求人とはどうなっているのか、を調べる。
そこで求人のある台湾のインターナショナルスクールに転職。

台湾のインターナショナルスクールで3年教え、途中で国際バカロレアの研修を受ける。
その後、シンガポールの国際バカロレア認定校のインターナショナルスクールに転職。

カナダ人がインターナショナルスクールの教員になるケース

カナダの生まれ育ち。カナダの大学の教育学部で学ぶ。
カナダの公立校で教え、その後、インドネシアのカナディアンスクールでとしてインター教員歴をスタート。
さらにタイのカナディアンスクールに勤務後、中東にあるドバイのカナディアンスクールに転職。

10代からインター教員を目指す

上記の例のように最初からインターの教員を目指しているケースは少数です。

なぜなら、インターナショナルスクールは、近年、増加している教育機関だからです。
1990年代まで、インターナショナルスクールに通っている生徒、教えている教員自体珍しい存在でした。

しかし、近年の新興国や資源国の発展とともに、世界中でインターナショナルスクールが急激に増加したため、インターナショナルスクールの教員ニーズが増えました。

現在、インターのベテラン教員の年齢(40代、50代)のインター教員で、最初からインターの教員になりたい、と考えていた人は珍しいといえます。

 

UCLAの教員養成コース スクリーンショット
https://gseis.ucla.edu/education/

現在、ベテランの多くが、英語圏で育ち、教育に興味を持ち、教員免許を取得し、現地で教員歴をスタートしているからです。

現地で教員をしながら、何かのきっかけでインターの求人を知り、応募したら待遇も良く、そのままインターの教員を務めているケースが多いようです。

最初からインターの教員になりたい、と考えているケースがあるとしたら珍しいといえます。

しかし、10代からインターの教員になりたい、と考えるケースがあります。
それがインターナショナルスクールの卒業生。

インター卒業生は、インターナショナルスクールの教育の良さを体験しており、教員に親近感を抱いていることが多く、自然とインター教員を目指すケースが多いようです。

ネイティヴまたはそれに近い英語力、インターの教え方も体験しているため、インター教員を目指す生徒がいるのは、とても自然です。

高校生ぐらいでインターの教員になりたい、と考え、積極的に学校のチューターやサタデースクール、サマースクールなどのアシスタントをしていきます。

また、担任の先生や職員に積極的に「将来、インターの教員になりたい」と相談し、進路を決めていきます。

インターの教員になりたいならば

英語力と英語圏の大学で教員免許を取得することが最初に必要なこと、といえます。
次に、教員歴を重ねること。
教員歴は、非常に重要です。

コツコツとアシスタントからスタートし、自費で夏休みなどに教員研修を受けて、インターの求人に応募していく必要があります。

インターに一度、転職できると(その時々の世界経済の状況にもよりますが)その後の転職はインターやボーディングスクールなど学校を選べるようになになります。

これには、理由があり、一度、インターで教員を務めると次のように学校側は考えるからです。

・インターのカリキュラムに合わせて指導ができる人物である。
・その教員が多国籍な教員と一緒に協力できる人物である。
・インターの校風、仕組みを理解している。

 

また、一度、インターの教員になると教員同士の横のつながりができます。
その横のつながりから、口コミで仕事が打診されることがあります。
国際教育系の研修、海外で開催される教育研修に参加していくと、どんどの横のつながりができ、教員募集について情報が集まってきます。

(ちなみに校長や教頭など重要ポストは、世界公募の学校もあります)

実力勝負のインター教員

インターナショナルスクールの教員は、グローバルな実力勝負の世界。
世界中から指導力を誇る教員が集まります。

日本では、インターナショナルスクールの教員採用において、国内または海外採用があります。
いうなれば、地域限定教員とグローバル教員です。

地域限定教員とグローバル教員では待遇面で大きな差があります。

 

国内採用の場合、インターナショナルスクールの勤務経験のあるベテランは、それだけ求められる教育の質も高いため、報酬体系も高いのが一般的です。

しかし、日本人で教師歴がない場合、まずは非常勤やアシスタントなどから勤務するのが一般的です。

また、賃金体制は、地域限定教員の方が低いのが一般的です。
海外のインター教師歴が長いほど、教員として報酬が高くなる傾向があります。

世界のエース教員がしのぎを削るインターの世界

「A先生が教えるとIBの平均点が上がる」という教員は、破格の条件でヘッドハンティングされます。

国際的な試験は評価方法とプロセスが同じとなるように基準があります。
ちなみに国際バカロレアの成績は、国際バカロレア機構が第三者として教員の評価方法とプロセスを監査しています。

公正であることが重要なため、国際バカロレア機構が生徒ひとりひとりの成績を把握しています。

すなわち、先生の評価方法やプロセスが国際バカロレア認定校で、同じになるようになっています。

例えば、ディプロマ課程の生徒のレポートが、国際バカロレア機構に提出され、チェックされるのは、そのため。

世界共通で同じ評価方法を用いているのが国際バカロレアなど国際試験の特徴です。

その国際バカロレアなどの国際試験で、点数を上げられる教員はそれだけ指導力がある証拠。

ちなみに国際バカロレアのディプロマ課程の資格取得試験は、45点満点。
1点が大きな差を生むため、国際バカロレアのディプロマ課程で、1点でも成績を上げられる教員は、スターなのです。

 

プリンストン大学の教員養成のスクリーンショット
https://teacherprep.princeton.edu/become-teacher

日本人がインターの教員に向く分野

インターナショナルスクールは、英語で指導するため不利な面があります。

しかし、有利な面もあります。

その代表が「日本語」。

 

多くの日本人は、日本語ネイティヴなので、例えば「日本語」の教員は向いています。
インターナショナルスクールの日本語教師は、競争が激しいため、例えば、国際バカロレアの日本語の教員を目指すなどした方が有利です。

日本人の心くばりや気遣いは、外国人から高く評価されています。

英語ネイティヴと互角に勝負する英語や英文学などではなく、理数系やアート・音楽系などが日本人が活躍できるインターナショナルスクールの教員分野だと考えられます。

インターの事務職員は?

教員免許は持っていないけど、英語は話せるし、子どもが好き、インターの学校事務をしてみたい、と思う方も多くいると思います。

国内のインターの事務職員ですが、かなり応募が多く、競争率が高いのが現状です。

また、実際にインターの事務職員から聞こえるのは、「激務」「保護者対応の大変さ」「教員より給料が安い」という現実。

 

インターは通常、一年を通して、海外からなどの転校生を受け入れています。
日本の学校では、夏と秋に説明会を開催し、試験は冬、入学は春というケースがほとんどです。

しかし、インターは、世界中から応募者が来るため、一年を通して学校案内、願書の確認、試験と面接の準備、教職員との打ち合わせなどをこなします。

この業務をアドミッション(入学担当)として担当した場合、ほぼ一年中、入学担当して折衝にあたります。

もちろん、英語・日本語で仕事をこなしていきます。

事務として経理を担当しても、経理は日本の税務署に日本語で税理士とともに提出し、理事会には英語で説明できる能力が必要です。

理事会も校長をはじめ、外国人が多く、日本の税法から説明し、どのような財務基盤を中長期的にも築くのか説明し決済をしてもらう必要があります。

インターナショナルスクールの事務は、英語が流暢であることは必須。
もちろん、多国籍な教職員と生徒・保護者に対し、相手が理解できるように根気強く説明する忍耐力。
学校の教育理念とルールを守ってもらい、さらに教育のパフォーマンスを高めていく裏方です。
教員とは違う厳しさがあります。

インターナショナルスクールの事務経験者の話を聞いていると、夏休みの数週間だけ心が安らぐ、という話も聞こえてきます。

インター事務は人手不足?

インターの事務職を希望者する方が多くいます。しかし、インターの増加で一番足りないのも事務職員。

なぜか?

インターの事務職員でも、事務長など管理職になりうる人材が不足しています。

インターの事務長になると国際認定組織との折衝、財務などの管理、職員の採用、生徒募集のマーケティングなどの知識と経験が必要になってくるからです。

特に、進学先と密接な国際認定組織との折衝などは、特殊な対応と経験が必要です。

国際認定組織は、毎年の監査と数年ごとの認定監査があり、膨大な量の資料作成が待ち受けます。

 

現在、国内では、国際バカロレア200校という計画がありますが、教員は海外からヘッドハンティングできます。

しかし、そうはいかないのが事務職員。

海外から外国人の事務長をヘッドハンティングしても、日本語、日本文化という壁があり、日本の学校に馴染みません。

地域への挨拶や協力は、日本語が中心。

また、備品や設備購入の取引先は、ほとんど日本語。
関係する役所への提出書類も日本語です。

日本人の保護者も多く通うため、外国人の事務長が日本で学校運営に携わるには、日本語コミュニケーションが必須です。

そこで、学校側としては、事務職員を養成したいのですが、学校運営のプロを要請するには、時間がかかります。

国内の幼小中高とあるインター事務職の管理職経験者は、ニーズが高いのですが、知識と経験がある人物はほとんどいません。

そのため外資系やメーカーの海外駐在員を務めたビジネスパーソンが事務長として就任することもあります。

事務長レベルの人材を確保するのは容易なことではないのです。

(なお、プリスクールやキンダーガーテンだけの事務経験者と小中高とあるインターナショナルスクールでは、必要とされる知識と経験が異なります。)

結局、インターナショナルスクールで働くには

正直なところ、教員免許を取得しても、どれだけ教育に熱意があるか。
どの国の人であれ、結局は、教育への情熱。それが一番大切な要素のようです。

 

こちらも参考にしたいですね。

インターナショナルスクールの「トリセツ」〜7分30秒で丸わかり〜

http://istimes.net/articles/805

インターナショナルスクールとはどんな学校なのか?どのように学ぶのか?どのような生徒が通っているのか?また、どのような保護者が通わせているのか?などインターナショナルスクールについて取材を通してまとめました。乳幼児が通うプリスクールではなくインターナショナルスクールについてのまとめです。

インターナショナルスクールの小学校を考える前に義務教育について知ろう!

http://istimes.net/articles/780

全国的にプリスクールやキンダーガーデンが増えています。待機児童の増加もあり、英語で学べるプリスクールの増加を後押ししています。そのまま近所の小学部のあるインターナショナルスクールに進学したくなります。しかし、その前に小学校と中学校は、義務教育。義務教育について知っておきましょう。

知っておきたい。プリスクール・幼稚園・保育園の学費と内容の比較

http://istimes.net/articles/723

お子さんの最初の学校選びで、幼稚園・保育園とともにプリスクール(インターナショナルスクールの幼稚部)も選択肢に考えたことはありませんか。そこで学費に絞って比較してみました。


この記事の記者

インターナショナルスクールタイムズの編集長として、執筆しながら国際教育評論家として、NHK、日本経済新聞やフジテレビ ホンマでっかTV、東洋経済、プレジデント、日本テレビ、TOKYO FMなど各メディアにコメント及びインタビューが掲載されています。

プリスクールの元経営者であり、都内の幼小中の教育課程のあるインターナショナルスクールの共同オーナーの一人です。

国際バカロレア候補校のインターナショナルスクールの共同オーナーのため国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了しています。