2017年02月16日
インターナショナルスクールの卒業生は、日本の高校生の1000人に1名。高校生の人数として、わずかな生徒ですが積極的にリクルーティングする名門大学。なぜ、名門大学はインターナショナルスクールの卒業生をリクルーティングするのでしょうか?そこには英語力、探究的に学ぶ力、そしてもうひとつの理由がありました。
日本の一条校に通う高校生は、全国で約330万人います。
単純計算では、1学年に約110万人の高校生が学んでいます。
実は、この数字、文部科学省が公表する学校基本調査から導きだしました。
ちなみに学校基本調査にインターナショナルスクールは、ほとんど含まれていません。
そこで、編集部が独自に国内のインターナショナルスクールに通う高校3年生相当を計算してみました。
その数、約1,000人。(*編集部の独自の計算です)
すなわち、全国の高校3年生相当のうち1,000人に1人しかいないのがインターナショナルスクールの高校3年生なのです。
しかし、名門大学は、今回のアオバジャパンを含め、インターナショナルスクールで開催される大学フェアに積極的に参加しています。
数万人規模の大学からすると進学する可能性のある生徒は、わずかといえます。
なぜ、名門大学がインターナショナルスクールの大学フェアに参加し、インター生を募集するのでしょうか?
今回のアオバジャパンで開催された大学フェアで直接、話を伺ってきました。
国際バカロレア一貫校のアオバジャパン・インターナショナルスクールで先日、開催されたThe Choose Japan Education Fairは、13大学(国内8・海外5)が参加しました。
【国内】
・Doshisha University (同志社大学)
・Lakeland University Japan(レイクランド大学)
・Okayama University(岡山大学)
・Osaka University(大阪大学)
・Ritsumeikan APU (立命館アジア太平洋大学)
・Temple University Japan (テンプル大学)
・Tokyo International University(東京国際大学)
・Tsukuba University(筑波大学)
【海外】
・Blue Mountains International Hotel Management Schools (SW)
・CQ University (Australia)
・Savannah College of Art and Design (SCAD) (US, HK Campus)
・Swiss Education Group (SW)
・United International Business Schools (UBIS) (UK)
今回のアオバジャパンで開催された大学フェアは、高校2・3年生だけではなく、同校生徒により深く進路について知ってほしいという考えから開催されました。
同校は、次のように説明しています。
本学の中高生に自身の進路を具体的に考えてもらう機会を作るため、大学進学説明会を実施
そのため同校の国際バカロレアのMYP課程やDP課程で学んでいる生徒や家族を対象としていました。
大学フェアで家族も一緒に知り、進路を考えるためのフェアでした。
話をお伺いしたのは、筑波大学生命環境系のアーヴィング先生。
本学は、留学生を含め、国際化を進めてきました。
そのため世界大学ランキングのThe Times higher educationの最も国際的な大学分野のランキンで141位と日本では2番目になることができました。
(編集部注記:国内で1位は、東京大学の136位)
海外からの留学生、帰国生、インター生、日本の学生が協力して学んでいく仕組みです。
インター生は、留学生と帰国生、日本の学生とも違います。インター生は、英語で自分で考えて学んでいく力とインターナショナルマインドを持っています。
留学生でも、日本の学生とも違う学びができる学生として魅力です。
お話を伺ったのは、グローバル・ディスカバリー・プログラムのハンセン先生と上杉先生。
岡山大学は、いち早く国際バカロレア入試を採用した国立大学法人です。
今回、英語で学ぶプログラムがリニューアルし、グローバル・ディスカバリー・プログラムとなりました。
岡山大学のディスカバリープログラムは、まず大学に入りそこから専攻を探していく学び方で、履修してきた科目や成績によりますが、学部を超えて選んでいくことができるのが特徴です。
上杉先生:国内のインター生は、英語でも、日本語でも学べる生徒が多く。
その点で両言語と学部の垣根を越えた学びを自分でつくることができます。
最初から決められたトラックに入るのではなく、自分で考えて履修していく仕組みです。
まずは大学に入り、その後、学部を超えて学べる仕組みが岡山大学のグローバル・ディスカバリー・プログラムの面白さですね。
実際に生徒さん、保護者の方にプレゼンをしたハンセン先生の感想です。
ハンセン先生:先ほど、生徒さん、保護者の方に本プログラムの説明をしました。
4年間英語で学べるという点、日本語ができる学生は日本語の授業も選択できるので、自分のカリキュラムが作れる点が日本人の親御さんも関心をもってもらえました。
インターに通う生徒や保護者にとって、海外の大学から国内の大学を選べるようになったことはポジティブに選択肢が広がったととらえているようです。
これまで多くのインター生が進学していたアメリカの大学は、学費の高騰もあり国内大学の良さを見直す動きがあるようです。
そのなかで、日本の大学が留学生や帰国生とともに英語で学べるコースを増やしていることで、インター生の進学先にクローズアップされているようです。
海外大学の日本校として、有名なのがテンプル大学ジャパンキャンパス。
インター生も多くが進学しています。
テンプル大学ジャパンキャンパスのオーティス先生に話をお伺いしました。
生徒ひとりひとり違うので一概にはいえないのですが、インター生は、アメリカ式の指導方法に慣れています。
アメリカ式のテーマ型の討論や問題解決型の学び方などに慣れている学生が多いと感じます。
そのため、入学後に成績が伸びています。
インター生が学んできた学び方の延長に近いと考えているようですね。
入学担当者に訊いて見えてくるのが、インター生は「英語で探究的に学ぶ力」があること。
もちろんインター生は、ひとりひとり違いますが、英語で学んできたという言語面だけではなく、その学ぶ力を評価しているようです。
今回の大学フェアに参加していた大学は、英語で学ぶコースやプログラムを持っています。
そのため、それらのコースやプログラムでは、英語で問題解決型の考え方や英語で討論し、自分の考えを伝える力が求められます。
コースやプログラムで学べる生徒を探していくと、国内のインター生はその素質があると考えているようです。
1の理由と重なるのですが、インターナショナルスクールの少人数制で自分で考えて、仮説を組み立てて、プレゼンし、結論をだしていく学びを体得していることがあります。
大学フェアに参加していたコース、プログラムは、その力を必要としています。
すでにその学び方で習得している学生は、大学に入った後も学び方を活かせます。
各大学とも国際化を進めています。
学生の生徒構成は、海外からの留学生、帰国生、国内からインター生、日本の学生と4つに分けられます。
インター生は、海外から入学してくる留学生、帰国生とも違い、すでに国内に住んでいます。
帰国生とインター生は、日本の学生、留学生の橋渡し役として中間的なポジションにいます。
探究的に学ぶ力、英語力など帰国生とインター生は類似点がありますが、国内のインターで学んだ生徒は、より日本の学生的な感覚も持ち合わせています。
欧米からの帰国生より日本の学生と波長が合わせやすく、帰国生、留学生ともコミュニケーションが取れるようです。
そのため、国内、海外の橋渡し役として、大学が注目しているようです。
探究的に学べる学生を求める大学にとって、インター生は、1,000人に1名の少数です。
しかし、国内では、国際バカロレアの200校計画が進んでいます。
国際バカロレアのディプロマ資格(DP)を持った日本の高校の卒業生は、「探究的に学べる学生」として大学から高い評価を受けると考えられます。
なぜ女子校激戦区の千代田区に国際バカロレア認定校がなかったのか?
http://istimes.net/articles/781女子校の激戦区千代田区。東京都23区の中核区で、千代田区の皇居周辺には国会議事堂、最高裁判所といった国の中枢機関が集まっています。その千代田区にインターナショナルスクールや国際バカロレア認定校など国際教育インフラがありませんでした。理由について一部加筆しました(9月3日)。
国際バカロレアは、国公立・私立・インターナショナルスクールの三つどもえ?
http://istimes.net/articles/799国際バカロレアは、広島と東京が熱い?国際バカロレアは、国公立・私立・インターナショナルスクールがそれぞれ異なる言語で実施しています。なかでも広島はインターナショナルスクール、私立、公立と人口280万人の都市ながら国際教育に積極的です。また、東京は国立、公立も国際バカロレアコースを設置。全国に普及するか、が注目です。
国際バカロレアは、国公立・私立・インターナショナルスクールの三つどもえ?
http://istimes.net/articles/799国際バカロレアは、広島と東京が熱い?国際バカロレアは、国公立・私立・インターナショナルスクールがそれぞれ異なる言語で実施しています。なかでも広島はインターナショナルスクール、私立、公立と人口280万人の都市ながら国際教育に積極的です。また、東京は国立、公立も国際バカロレアコースを設置。全国に普及するか、が注目です。
「世界で使える大学志願資格」国際バカロレア(International Baccalaureate)とは、世界中を転勤する家庭の子どもが、大学に進学できるように国際的に認められる大学志願資格を作ろう!という動きから生まれました。世界的な転勤族の子どもの教育を考えて生まれたと考えるとわかりやすいですね。
この記事の記者
インターナショナルスクールタイムズの編集長として、執筆しながら国際教育評論家として、NHK、日本経済新聞やフジテレビ ホンマでっかTV、東洋経済、プレジデント、日本テレビ、TOKYO FMなど各メディアにコメント及びインタビューが掲載されています。
プリスクールの元経営者であり、都内の幼小中の教育課程のあるインターナショナルスクールの共同オーナーの一人です。
国際バカロレア候補校のインターナショナルスクールの共同オーナーのため国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了しています。
上杉先生(写真左)、ハンセン先生(写真右)