ImaginEx 代表 町田 来稀さん、下島 一晃さん
インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢、アメリカンスクール・イン・ジャパン、横浜インターナショナルスクール。
三校が共通して取り組んでいる教育手法があります。それがデザイン思考です。
軽井沢で日本初となる全寮制インターナショナルスクール(ISAK)の立ち上げに参画し、講師としてリーダーシップ・カリキュラム構築にも関わっていた町田さん、下島さん。
ふたりがISAKから独立し新しく立ち上げたのがImaginExです。
ワークショップも開催しています。そこで、ImaginExの町田さん、下島さんにお伺いしました。
■ImaginExの町田さん、下島さんにお伺いしました。
ImaginExの町田さん(左)下島さん(右)
こどものチャレンジする心を育むグローバル教育プログラム ImaginEx(イマジネックス)
詳しくはこちら https://imaginex.jp
―――タイムズ(村田):今日は、忙しいところありがとうございます。前職であるインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(以下ISAK)は、UWCの加盟などまさに世界のトップ校に準備が進んでいますね。
今回、ISAKのリーダーシップ研修を講師として、また構築にも関わってきた町田さん、下島さんが独立し、今までの多様な経験を活かしてプログラムを開発したと知り、急にインタビューをお願いしました(笑)。
実は、私自身、マインドフルネスやデザイン思考を詳しく知りません。
調べると国内では、インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢、アメリカンスクール・イン・ジャパン、横浜インターナショナルスクールの三校が取り組んでいるプログラムですね。
今回のインタビューを通してマインドフルネスやデザイン思考を紹介するとともにImaginExの考えをお伺いしたいと思います。
まずは町田さん、下島さんのご経歴を教えてください。
都内のインターナショナルスクールでワークショップ中の町田さん
町田:本日はありがとうございます。
簡単に自己紹介しますと私はボストンで産まれ、23年間アメリカ東海岸とシンガポールで過ごしました。
米国東海岸にあるブラウン大学の生物学部人間生物学科を卒業し、卒業後は研究者、英語講師として務め、ある時期はプロの和太鼓集団のメンバーとしても活動していました。
ワークショップ講師もやっておりまして、今まで世界20都市で、4000人以上にワークショップを行い、2013年からは軽井沢で日本初となる全寮制インターナショナルスクール(ISAK)の立ち上げに参加させていただきました。
ISAKではサマースクールプログラムのディレクター、リーダーシップ・カリキュラム構築のコンサルタントおよび講師として関わり、2015年よりImaginExの立ち上げのために独立しました。
都内のインターナショナルスクールでワークショップ中の下島さん
下島:私の産まれは日本なのですが、小学校2年生の時に父親の仕事で米国へ行き、高校卒業までの12年間をアメリカの東海岸で過ごしました。
早稲田大学の国際教養学部に入学とともに帰国し、大学時代はバイリンガル講師のみを採用する企業で海外留学を目指す中高生の英語講師を務めました。
大学卒業後は、バークレイズ証券株式会社のアナリストを経て、2012年からISAKの立ち上げに参加しました。
ISAKではアドミッション(生徒募集・入試)担当に加えてリーダーシップ・カリキュラム構築のコンサルタントおよび講師として関わり、町田と同様に2015年よりImaginExの立ち上げのために独立しました。
村田:おふたりの経歴を拝見するとともに帰国生で、アメリカの学校で学んだ期間が長い。そんなふたりが、社会に出た後、ISAKの立ち上げで出会う。
日本の社会でグローバルな教育を受けてきたふたりがISAKで出会うのも、点と点を線に結んでいくISAKらしいと感じました。
ISAKの話が長くなってしまうのですが、世界トップのインターナショナルスクールの立ち上げに関わること自体も珍しい経験だと思います。
町田さん、下島さんは、実際にISAKでリーダーシップ・カリキュラム構築のコンサルタントと講師をされてきました。具体的にリーダーシップ・カリキュラムとは、どのような内容でしょうか?
ISAKのFaceBookページより引用
ImaginEx:ISAKはリーダーシップが大きな軸となっている学校です。ISAKではリーダーシップは、特定の人が生まれ持った才能や地位や肩書きではなく誰でも鍛錬すれば身につけられるものだと考えています。
そのリーダーシップの基礎となっているのが自分の意識を向ける先をコントロールする習慣です。
ストレスを感じている時や困難な場面では目の前にある問題にばかり意識が向いてしまうのはとても自然なことです。
しかし、リーダーシップを発揮するにはいかなる場面でも自分が置かれている状況に意識を集中させ、自分や周りの人の感情等も考えた上でその状況において一番大切なことに気づくことです。
この気づく力によって一つの物事を多面的に捉え、多様なバックグラウンドの人とも協働しながら困難な状況を乗り越えることができます。
セントラルフォレストインターナショナルスクール立川の園児にマインドフルネスを実施。写真は、意識を分散させる練習。テニスボールをお腹に(丹田)にあてて、呼吸と感覚を養っている。
村田:気づく力とはおもしろいですね。
ImaginEx:この気づきをさらに行動へ繋げるためにISAKではデザイン・イノベーション・プログラムを行っています。
このプログラムでは人のニーズの本質を見極めるトレーニングを行っています。
共感する力を養い、デザイン・イノベーション・プログラムで活用するプロセスを使用して在学中の3年間で学校内外のコミュニティー、自分が暮らす社会や国際的なレベルで生じている課題に仲間と一緒に取り組む機会があふれています。
村田:気づきから、人のニーズの本質を見極める。ちょっと難しそうに感じますが、今回独立されたImaginExでは、実際どのようなプログラムとして開催されるのですか?
ImaginEx:ISAKでリーダーシップカリキュラムに関わった経験も活かし、ImaginExで行うプログラムではマインドフルネスとデザイン思考を活用したワークショップを提供していきます。
自らの視野を広げることで一人ひとりが自分の可能性を広げることを目的としています。
マインドフルネスは「集中すること」「気づき」等、たくさんの類義語を使って説明されることがありますが、一つの定義としては「意識的に注意を向けること」が挙げられます。
マインドフルネスを取り入れることで雑念、ストレスに妨げられず、より意識的に目の前にある状況や状態に集中することが可能となります。
ワークショップではまず脳の仕組みを学びます。
「勉強よりもゲームや漫画に時間をかけてしまう」、「部屋の片付けを始めるのに時間がかかる」。
やらなくてはいけないと自覚していても、なかなか行動に移せない経験は誰でもあると思います。
村田:いくつも思い当ります(笑)。
ISAKのFaceBookページより引用
ImaginEx:実は人間の脳には「楽」と感じないことや慣れていないことに対し、不安や緊張感を感じさせる機能が備わっています。
ImaginExのワークショップではその仕組みを学び、思い込みにとらわれず不安や抵抗を乗り越える方法を教えています。
仕組みを学んだ後にチームでアクティビティに取り組み、学んだことを実践していただきます。
またアクティビティ後には一人ひとりが実践を通して気付いたことを考えたり、仲間と共有する時間を設けており、これを行うことによって「学び」をより実用的な「応用」へとつなげます。
一方でデザイン思考は、教育界およびビジネス界でも注目を受けている問題解決のプロセスです。思い込みにとらわれず、柔軟な考え方を活用して問題解決に取り組むことを可能とする方法です
村田:気づく力と脳の構造、そして問題解決に取り組む方法がデザイン思考ということですね。
具体的にデザイン思考について教えてください。
ImaginEx: ワークショップではデザイン思考のプロセスを把握していただくために、身近な課題をベースに取り組んでもらいます。
例えば、いつもの生活の中でちょっとイラッとする場面等を考えて頂き、それに該当する写真をとってワークショップに来ていただきます。
「ペットボトルの蓋が開けにくい」、「家の鍵をなくしてしまう」、「セロハンテープが使いにくい」等色々な課題をひとりずつが持ってきて、グループとしてその課題に取り組みます。
本当の問題はどこにあるのか、どうやったらお互いのアイデアをもっと面白くできるのか、試作品はどのように作ったら周りの人にイメージしてもらいやすいか等をワークショップを通して学び、仲間と一緒に実践していきます。
そのプロセスを通じてデザイン思考のアプローチをしっかりと掴むことで、身近な問題だけではなく「発展途上国において未熟児の生存率の向上」等、社会が抱えている大きな問題にも適用することが可能となります。
さらには、ブレストやディスカッションを通じて、お互いの話を聞いて理解し、効果的にコミュニケーションをとることを実践してもらいます。
ワークショップは、この二つの手法をベースに多様なアクティビティーや英語等のツールが更に盛り込まれており、「学んでみよう!」という前向きなマインドセットを育み、自分の可能性を一人ひとりが広げていくことを最終的な目的としています。
村田:これからの新事業では日本人が主な対象となると思いますが、日本語が母語の子どもたちが弱い点と強い点など傾向的にあるのでしょうか?
ImaginEx: 日本語が母語の子どもたちの傾向としては、双方向で先生と生徒が一緒に学びの場を作る形式の授業を経験している方がまだ少ないように思います。
そのため、自分の考えを発信する積極性という点では世界中から集まった生徒に比べてまだまだ追いつく必要があると感じます。
ただ、一度アイデアを出し始めると独自性や共感する力を発揮して、素晴らしい考え方を披露してくれる方が大勢いることは今までの経験からも感じています。
村田:私は、40代に入り、自分で考え方の癖があるのだと気付きます。40代から脳の癖を変えるのはなかなか難しいように感じます。
こう考えている時点で、脳が硬くなっているように思うのですが笑。マインドフルネス・デザイン思考を習得するに良い年齢はあるのでしょうか?
ImaginEx:何歳であっても自分が慣れていないことに挑戦するのは多少の抵抗や不安があるものだと思います。
新しいことを学ぶというプロセスにおいて脳内の仕組みから考えると、脳細胞が新しいつながりを作ることと捉えることもできます。
年齢を重ねる事に新しく作られていくつながりの数は減少する傾向にはありますが、新しい繋がりを作ることは可能であるため、何歳であっても新しいことを学ぶことは可能だと思われています。
ただ、今までやってこなかった新しいスポーツや楽器を学ぶのと同様に何事も鍛錬を重ねることで上達していきます。
そのため、マインドフルネスやデザイン思考等の考え方も早い段階から触れることで生涯を通して練習を重ねる機会を増やすことができます。
なので早い段階から取り組むことで損することはないと思います。
ISAKのFaceBookページより引用
村田:そうですね。早くから習慣化するとその子らしく生きやすくなりそうですね。
小学生、また中学生を対象とした体験会を開催されます。また、季節のワークショップが開催されます。どのようなお子さんにImaginExのプログラムを体験してほしいと考えていますか?
ImaginEx:新しい仲間との出会いや経験を通じて自分の視野をもっと広げたい、または考える力やチャレンジ精神を育みたいという方に是非一度ワークショップに足を運んでいただきたいと思います。
村田:参加するお子さんはもちろん、保護者もワークショップを楽しみにしていると思います。ワークショップでお子さんが経験したことを伸ばすために保護者ができるコツがあったら教えてください。
ImaginEx:ワークショップを一つのきっかけの機会として捉えていただきたいと思います。
練習や実践で試すことを重ねなければ、せっかく学んだことも自分のものにすることはできません。
なので、参加者のみなさんにはワークショップ後にも自分の学校生活、学習場面などにどのような形で落とし込めるかを考えて物事に取り組んでいただきたいと考えているため、ワークショップ内の最後の振り返りではこれをテーマに話す時間が設けられています。
ImaginEx:ワークショップを一つのきっかけの機会として捉えていただきたいと思います。
練習や実践で試すことを重ねなければ、せっかく学んだことも自分のものにすることはできません。
なので、参加者のみなさんにはワークショップ後にも自分の学校生活、学習場面などにどのような形で落とし込めるかを考えて物事に取り組んでいただきたいと考えているため、ワークショップ内の最後の振り返りではこれをテーマに話す時間が設けられています。
ImaginEx:保護者の方にはぜひお子さんにどのようなことを学んだかを聞いていただきたいと思います。
自分が学んだことを言語化して、誰かに伝えるという行為自体が理解を深める上でとても有効的な方法でもあるため、ぜひ学んだことを一緒に共有していただけるようお子さんと話してください。
ワークショップでは、自分が今後頑張りたいこと、挑戦したいことなどを参加者に言語化してもらいます。
もしお子さんが「もっと人の話しをちゃんと聞けるように努力する」と決心した場合、その努力をサポートしてあげることを保護者としてできます。
誰でもそうですが、時間が経ってしまうと学んだことを忘れてしまったり、決めたこととは異なった行動をとってしまうことがあります。
楽器と同じで、「うまくなる!」と決めても、最初は失敗だらけです。むしろその失敗があるからこそ、上達につながります。
たまに、「今日も人の話を聞く練習をしてみた?」と優しくリマインダーをしてあげるのもいいと思います。
村田:今後のImaginExの取り組みについて教えてください。
ImaginEx:今後もワークショップを開催していきたいと思っています。
小学校高学年、中学生向けに主にワークショップを行う予定ですが、小学校低学年、高校生、大学生や社会人にもプログラムを提供できればと考えています。
また、色々な学校や教育現場にも出張授業のような形でプログラムを提供できればと思います。
村田:ImaginExの町田さん、下島さんありがとうございました。
学習・進学に繋がる「学びのマインドセット」
「学び方」の新常識を身につけ問題解決能力と自己管理力を育むワークショップを
週末および長期休み(春休み、夏休み、冬休み)に開催しています。
URL:https://imaginex.jp
インターナショナルスクールタイムズの編集長として、執筆しながら国際教育評論家として、NHK、日本経済新聞やフジテレビ ホンマでっかTV、東洋経済、プレジデント、日本テレビ、TOKYO FMなど各メディアにコメント及びインタビューが掲載されています。
プリスクールの元経営者であり、都内の幼小中の教育課程のあるインターナショナルスクールの共同オーナーの一人です。
国際バカロレア候補校のインターナショナルスクールの共同オーナーのため国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了しています。