インター生が直面する「日本語の壁」をどう乗り越えるか。読解力こそが全教科の土台となる
©️Norma Mortenson pexels
インターナショナルスクール(以下、インター校)に通うお子さんを持つ保護者にとって、英語力の向上は喜ばしい反面、常に不安がつきまとうのが「母語である日本語の定着」です。
特に近年、中学受験において英語入試が一般化する中で、インター生が受験の現場で直面しているのは、英語の難易度ではなく「日本語の読解力不足により、算数などの他教科が解けない」という意外な落とし穴でした。
一見、流暢に日本語を操っているように見える子供たちの裏側で、何が起きているのか。学習の土台となる「思考のための言語」をいかに育むべきか。
本記事では、小学校受験指導の第一人者である大迫ちあき氏にインタビューさせていただきました。
インター生特有の「日本語の壁」の正体を解き明かすとともに、最新のAI読書教育を通じた「個別最適化された学び」が、いかに子供たちの全教科にわたる学力を底上げするのか、その最前線に迫ります。
英語入試の裏側に潜む「日本語の欠如」というリスク
©️ kawa_xxx Photo AC
編集部 村田(以下、村田):大迫先生は、数多くのインターナショナルスクール(以下、インター)に通う生徒の算数など指導をされてきました。
近年、インター生が増加しているとお聞きし、その背景について教えていただけないでしょうか。
大迫 ちあき 氏(以下、大迫):近年、中学受験における英語入試の広がりとともに、インターに通うお子さんの受験が非常に活発になっています。
しかし、教育現場で長年指導を続ける中で、無視できない深刻な問題が浮き彫りになってきました。
それは「日本語ができないために、算数の問題が解けない」というお子さんが増えているという事実です。
村田:算数ですか。一般的には、算数は万国共通の「数式」を扱うため、言語の壁を越えやすい教科だと思われがちですが。
大迫:かつての算数はそうだったかもしれません。しかし、現在の日本の入試傾向は大きく変わっています。
問題文そのものが非常に長く、複雑な設定を読み解く力が求められるのです。私たちは「全ての教科の学習は、国語力・読解力の土台の上に成り立っている」と考えています。
村田:なるほど。日本で生活していれば日本語は自然に身につくと思われがちですが、アカデミックな場での「国語」とは別物であるということですね。
大迫:その通りです。特にインター生や帰国生が直面するのが、BICS(生活言語能力)とCALP(学習言語能力)の乖離です。
日常会話(BICS)は完璧で非常に流暢なのですが、教科書の理解や抽象的な概念思考に必要な「学習言語能力(CALP)」が不足しているケースが多々あります。
村田:家庭内や友人との会話では不自由しなくても、学習の場に入ると途端に壁にぶつかってしまう。
大迫:はい。たとえば「しとしと」「ぽつぽつ」「ざあざあ」といった雨の表現の機微や、日常会話ではあまり使われない形容詞、形容動詞などの語彙、そして論理的な文章構成力です。
「友達と遊ぶ約束はできるけれど、『AとBを比較して共通点を述べなさい』と言われると固まってしまう」という状態です。
このCALPが欠けていると、一見日本語は堪能に見えても、国語の点数が上がらず、複雑な読解ができなくなってしまうのです。
「9歳・10歳の壁」と算数への深刻な影響
お話をお聞きした大迫 ちあき先生。
(公財)日本数学検定協会認定・算数インストラクター。
2015年に「幼児さんすうスクール SPICA®」を設立し、同時に日本初の幼児さんすう指導者養成講座を開講。算数の土台となる読解力と論理的思考力の重要性を、著書やメディアを通じて発信している。
大迫:この問題は、よく英語教育で言われる「9歳・10歳の壁」とも深く関係しています。国語も同じで、この時期に自然に任せているだけでは、抽象的な思考を支える高度な読解力は育ちません。
村田:その読解力の不足が、具体的にどう算数に影響を与えるのでしょうか。
大迫:今の算数の入試問題は、いわば「算数の顔をした国語の問題」です。
たとえば「AはBの何倍か」と「Aの何倍はBか」では、全く逆のことを指していますが、読解力に不安のある子はここの概念理解ができません。
また、「Aに対するBの割合」といった抽象度の高い表現も躓きの原因になります。
村田:計算以前の問題として、問題文で何が問われているかの「概念理解」で止まってしまうわけですね。
大迫:そうです。論理的思考の元になるのは言語能力です。ここが脆弱だと、どんなに計算演習を繰り返しても、応用問題や初見の問題で言葉の壁に阻まれてしまいます。
10歳前後から、算数に「割合」「比」「速さ」といった、目に見えない「抽象概念」が登場します。「目に見えるリンゴを数える算数」から「目に見えない言葉の関係を処理する数学的思考」への脱皮が必要な時期になります。
インター校でIB(国際バカロレア)の論文を書く際にも、母語である日本語の思考力がしっかりしていなければ、深い探究は望めません。
日本語の力をつけなければ、セミリンガル(ダブルリミテッド)に陥る危険性すらあるのです。
pixabay
AI読書教育「ヨンデミー」による読解力の養成
大迫:この「読解力」を育てる手段として注目しているのが、AI読書教育アプリ「ヨンデミー」です。
AIが150以上の指標に基づき、文字数や語彙、漢字の難易度からその子に最適な本をレコメンドします。
個別最適化された「少し上」のレベルの本を読み進めることで、自然に高度な読解力が養われます。
図書館予約システムとも連携しており、習慣化しやすいのが特徴です。実証実験では偏差値が10伸びた例もあり、学習の土台作りに大きな効果を発揮しています。
これまでヨンデミーは、教育意識の高い家庭が個人で利用するものが中心でしたが、今後は学校や塾などの教育機関への導入が加速しています。愛知県の瀬戸SOLAN小学校などがその先駆けです。
村田:SNSでも保護者の感想を見ることがあります。ちなみに学校側、特に先生方にとってのメリットは何でしょうか。
大迫:AIがレコメンドや進捗管理を行うため、教員の負担が極めて少ないことです。
先生は管理画面で、生徒が今週何冊読んだか、どんな本に興味を持ったかを一目で確認できます。
授業の冒頭でそのデータに基づき、「〇〇さんはこの本を読んだんだね。どこが面白かった?」と声をかけるだけで、質の高い指導が成立します。
紀伊國屋書店と連携し、Yondemyの独自指標「ヨンデミーレベル」のレベル別選書棚を設置するなど自分の読む力に合った本との出会いを創出する取り組みも始まっています。
村田:インター校に通わせる日本人の保護者にとって、日本語教育は重要です。
大迫:まさしくそこがポイントです。学校ブランドとして差別化を図る際、「英語だけでなく、最新のAIを活用して日本語の読解力も科学的に育てます」という姿勢は、保護者にとって非常に心強いメッセージになります。
渋谷区の図書館システムと連携して、学校帰りに本を借りて帰るような仕組みも構築可能です。
村田:今の時代、AIやデータを活用した個別最適化は避けて通れませんね。
大迫:はい。しかし、最終的な目的はあくまで「子供たちが実際に本を読み、思考を深める体験」を創出することです。昨今の中学受験では、女子校などで8000字もの超長文、文庫本一冊分に相当するような物語を読ませるケースも出ています。
この過酷な状況を突破するためには、幼少期からの圧倒的な読書習慣と語彙力が不可欠なのです。
村田:インター生が抱える課題に対し、ヨンデミーのようなソリューションは非常に親和性が高いと感じました。
こうした課題意識を持つ学校様へ積極的にこの情報を届けていきたいと思います。
ぜひ、多くの方にこの重要性を知っていただきたいですね。
大迫先生ありがとうございました。
ヨンデミーは、AIヨンデミー先生が一人ひとりに合った本をおすすめし、楽しく・ムリなく読書習慣が身につくオンライン読書教育の習い事。無料体験レッスン受付中。


インターナショナルスクールタイムズの編集長として、執筆しながら国際教育評論家として、NHK、日本経済新聞やフジテレビ ホンマでっかTV、東洋経済、プレジデント、日本テレビ、TOKYO FMなど各メディアにコメント及びインタビューが掲載されています。
プリスクールの元経営者であり、都内の幼小中の教育課程のあるインターナショナルスクールの共同オーナーの一人です。
国際バカロレア候補校のインターナショナルスクールの共同オーナーのため国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了しています。