オランダのバイリンガル教育とは?
■オランダのWEBメディアのExpatica
オランダ在住のローズ記者がオランダのExpatica紙からご紹介するのが”What’s new 2016: Dutch education with a bilingual tongue"という記事。
翻訳すると『オランダの新しいバイリンガル教育』。
教育先進国のオランダが抱える悩み。
そこには、日本の参考となる国際教育のヒントがありそうです。
What's new 2016: Dutch education with a bilingual tongue
http://www.expatica.com/nl/education/Exciting-developments-in-Amsterdams-schools_558345.htmlThe Dutch government continues to pride itself on 'choice' in education: from considering Trampoline schools to, more importantly, boosting bilingual and international education in the Netherlands.
■『オランダの新しいバイリンガル教育』
オランダ政府は、教育における「選択」に誇りを持っている。
トランポリン学校(早朝預かりのある公立小学校)の検討から、より重要なのは、オランダにおけるバイリンガル教育と国際教育の強化である。
多くのオランダの都市の人口は高齢化しており、学校は閉鎖や合併を余儀なくされている。
しかし、オランダの首都であるアムステルダムでは、新しい学校のニーズがある。
アムステルダムでは、今後10年間で、小学生の数は9%、高校生の数は11%増加することが見込まれている。
教育改革のため、オランダの地方自治体は住民に対して、彼らの理想的な学校がどのようなものであるかアイデアを求めた。
市民と専門家が投票し、特徴ある15校が通過し、実施に向かっている。
この教育改革は、早朝預かりのある公立小学校(トランポリン学校)からラテン学校までに及んだ。
また、恵まれない子供たちを育てる学校や0歳から18歳までの子供たちを受け入れる学校を作る計画も含まれている。
現在、これらのアイデアを実施するプロジェクトが推進されており、3〜4つの計画をはじめとして実現に向かっている。
地方自治体は、住民の意見を反映した学校を建設するために必要な支援を提供することを約束している。
オランダの約束:教育の自由
政府からの補助金で学校が始まることは、新しいことではない。
百年以上続いた激しい教育論争の後、1917年にすべての当事者が教育自由法に署名した。
それ以来、公立学校(Openbare)と特別学校(Bijzondere)は学校として同じステイタスを持つこととなった。
現在では、オランダの約3分の2の子どもが特別学校へ通っている。
特別学校は、彼ら自身の委員会(通常は親や財団のグループで構成されている)によって運営されており、多くの場合、モンテッソーリ教育やドルトン、ウォルドルフなどの宗教や教育哲学に基づいている。
これらの特別学校の中には、更に特別な特色を打ち出す学校もある。
例えば、どんな教育ニーズにも応えるような多方面に渡るオランダの教育システムを提供するような学校もある。
バイリンガル・スクール:「子供に良いスタートを与える」
カリキュラムの半分は典型的なオランダ語、もう半分は英語で教えるというバイリンガルの高等学校は、しばらく前から存在している。
最近発展してきているのが、バイリンガルの小学校である。
オランダ国内で18の小学校がバイリンガル試験校に任命され、30〜50%の授業が別の言語(通常は英語)で行なわれている。
オランダ政府は、グローバル化が進展する世界において、授業の一部を英語で実施することは、子供たちに良いスタートだと認めている。
その一方で、オランダ語力の低下について懸念されてきた。
オランダ語力について、これらの試験校は、監督され、サポートされ、厳密に教育について評価されている。
他のいくつかの学校では、カリキュラムの中でより多くの英語の授業を行うよう独自の形を提案している。
彼らは正式な試験校ではないのでより制限があり、他言語の授業(通常英語)での講義は20〜30%の時間にカリキュラムが組まれている。
私立学校または助成を受けた学校?
私立学校は授業料がかかり、オランダ政府から助成を受けていない有料の学校だ。
一方、公立学校と特別学校は親からの寄付を募ってはいるが、無料である。
重要なのは、バイリンガル学校はあくまでオランダ学校であり、オランダのカリキュラムの上に英語が提供されているということである。
オランダ語を話さないバイリンガル学校に通う6歳以上の子どもは、事実上、公立学校、特別学校で受け入れることができない。
そのため、バイリンガル学校に通う多くの子どもたちは、6歳以上からはオランダ語で学ぶために、オランダ語のイマージョンプログラムに行くことを求められる。
早期外国語教育(VVTO)
法律では、オランダ学校は遅くとも7年生(約10歳)で英語の授業を開始しなければならないことになっている。
実際は、例えば英語の授業を1年生の段階から始める学校がますます増えつつある。
これらの学校はVVTO学校と呼ばれ、早期外国語教育を実施している。
VVTO学校とバイリンガル学校の違いは、バイリンガル学校では歴史や体育館などの科目も英語(または他の外国語)で教える一方、VVTO学校は早い段階から外国語の授業があることである。
残りのカリキュラムはオランダ語によって行なわれる。
おそらくこの点で最もユニークな学校は、Europa Schoolで、子ども達は1年生から英語、フランス語、スペイン語のいずれかを選ぶことができる。
外国人の子どもは母国語を選ぶことはできないからだ。
さらに、同校ではイギリスの探究的な国際カリキュラムであるIPCプログラムも開始した。
オランダのアムステルダムにある1年生から英語、フランス語、スペイン語のいずれかを選ぶことができるEuropa School。
国際初等カリキュラム(IPC)
もう一つ興味深い変化があった。
それは、いくつかのダッチスクールがイギリスの探究的なカリキュラムであるIPCプログラムを導入したことである。
IPCは、多くのインターナショナルスクールで採用されてきた、テーマベースで学習する国際初等カリキュラムである。
ほとんどの科目は統合された形で提供され、学生は自分達で(グループ)リサーチを行い、多くのことを学ぶ。
テーマに沿って学ぶカリキュラムのIPC。
柔軟な授業時間
外国籍の親が、オランダに来てはじめに気付くことの一つは、ダッチスクールの出欠に関する法律が非常に厳しいことである。
小学校の8年間で、子どもは少なくとも7,520時間学校に通う義務がある。
学校経営者は自分の裁量で数年に渡ってこれらの時間を分割できるので、学年が上がるにつれてより多くの時間を設定することもできる。
また、学校の休暇は国が事前に設定されており、学年中に他の休暇を学校が作ることはできない。
いくつかの学校では、親が一年を通して好きな時に休暇を取ることができるような自由度のある、より柔軟な構造が考え出されている。
これらの学校のほとんどは有料の私立学校で、民間が経営する学校は柔軟性が高い。
なぜなら生徒達は、何を、いつ(国の要求を満たした中で)学びたいのか自由に決めることができるからである。
才能のある子供
オランダのことわざで「誰もが正常に行動するはずである。なぜならあなたが十分におかしいから」というものがある。
諺にあるように、多くの人が飛び級など同年代の学力的に進んだ子どもがいることに眉をひそめる人が多かった。
飛び級をさせることは、その子にとって適切な解決策ではないことが判明してきており、これを実感する学校が増えている。
多くの学校では、飛び級するような子どもに一週間に数時間、やりがいのあるプロジェクトに取り組む「プラスクラス」という制度を導入している。
アムステルダムの大半の学校では、最優秀な生徒を週に1日「Day a Week School(週に一度の学校)」に通わせている。
この「週に一度の学校」では、彼らの認識、思考能力に対してより難しい課題が与えられる。
オランダでは、モンテッソーリ教育のような、年代が混じったグループの中で学ぶマルチエイジ教育や自分のペースで自立して課題に取り組める学校がすでに導入されてきた。
しかし、今ではいくつかの新しい取り組みをする学校では、さらに教育を刷新されている。
子どもたちを年齢より、それぞれの科目における成熟度に基づいて異なるグループで取り組めるようにしているのである。
オランダが苦労して手に入れた「教育の自由」。
それが、グローバリズムに適応していることは興味深いことである。
出典:expatica ”What’s new 2016: Dutch education with a bilingual tongue”
http://www.expatica.com/nl/education/Exciting-developments-in-Amsterdams-schools_558345.html
コラムニスト:翻訳後
いかがでしたでしょうか?
オランダには教育を選ぶ自由があり、政府でも様々な取り組みがなされています。
ヨーロッパの小国であるオランダが生き残っていくために英語教育に力を入れること必要なことなのかもしれません。
でも驚かされるのは、その方法とスピードです。
2014年に一部の地域で試験的にはじめられたバイリンガルスクールは年々少しずつ増加しており、結果が良ければ2019年までにより大々的に展開するということが発表されています。
すでに英語圏外の国の英語能力ランキングで常に上位であるオランダが、今後どうなっていくのか注目です。
■トランポリンスクールとは?
本文中には「トランポリン学校」について説明がなかったので、気になって調べてみました。
もちろんトランポリンの練習をする学校ではありません。
この学校は、朝7:30から子どもを受け入れる「フロント・ケア」の付いた公立小学校でした。
筆者もオランダに住む一人の働く母親として、素晴らしいアイデアだと思うと同時に、オランダの教育に対する飽くなきチャレンジと実行力に改めて感銘を受けました。
これには、行政だけでなく、保護者や地元住民の積極的な協力や参加が不可欠です。
近年日本においても、英語教育の変革やバイリンガル教育について議論がなされています。
それぞれの国によって風土や事情が異なり、そのままオランダのやり方で実行することは難しいでしょう。
でも、何か採り入れることのできるアイデアやヒントがあるかもしれないと思い、この記事を紹介させていただきました。
英語教育やバイリンガル教育について考えてみるきっかけになれば幸いです。
■こちらも参考にしたいですね。
オランダ発!インターナショナルスクールに通わせてよかったと思う5つの理由
http://istimes.net/articles/885オランダ駐在のローズさんのコラムです。香港→マカオ→マレーシア→オランダで子育てをしてきたローズさんが、子どもをインターナショナルスクールに通わせてよかったと思う理由を親目線から考えてみました。
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http://istimes.net/articles/805インターナショナルスクールとはどんな学校なのか?どのように学ぶのか?どのような生徒が通っているのか?また、どのような保護者が通わせているのか?などインターナショナルスクールについて取材を通してまとめました。乳幼児が通うプリスクールではなくインターナショナルスクールについてのまとめです。
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