Powered by Global Step Academy    
「英検準2級プラス」を徹底解説:準2級と2級の間に新設された新たな級とは

「英検準2級プラス」を徹底解説:準2級と2級の間に新設された新たな級とは

2025年に新しく導入された「英検準2級プラス(Grade Pre-2 Plus)」についての解説です。この新たな級は、準2級と2級の難易度の差を埋めるために設けられました。他の級との違いや位置づけ、各セクションで出題される内容の特徴、そして効果的な対策方法について詳しく紹介します。


2024年に実施された既存の試験改定に続き、日本英語検定協会は2025年、新級を導入しました。新設された英検準2級プラスは、準2級と2級の間に位置づけられ、文部科学省(MEXT)が指摘していた両級の間のギャップを埋める目的で設けられたものです。

新しい級が誕生した理由

毎日新聞の報道によると、文部科学省の調査では、受験者が英検の上位級を合格するのに平均で1年かかるのに対し、準2級から2級に合格するには平均2年を要することがわかりました。このため、両級の間に中間レベルを設けることで、英語学習者がより達成しやすい目標を持ち、モチベーションを維持しながら英検の各級を進んでいけるようにすることが目的とされています。

・毎日新聞: https://mainichi.jp/articles/20250421/k00/00m/040/142000c

・Mainichi English (毎日新聞英語版):    
 https://mainichi.jp/english/articles/20250422/p2a/00m/0na/024000c

英語学習者の立場から見ると、「2級に合格する自信がまだない」「テストを目標にすると学習のモチベーションが上がる」という人にとって、準2級プラスは有益なステップとなるでしょう。とはいえ、テストの合格だけが英語を学ぶ目的ではないということも忘れてはいけません。モチベーションを保つもう一つの方法は、「英語を中級(あるいは上級)レベルで話せるようになったら、自分は何ができるようになるだろう?」と自分に問いかけることです。そうすることで、“英語を使いこなす未来の自分”という明確なビジョンを描き、それに向かって努力することができます。

英検準2級プラスの位置づけ

筆者がこれまで英検準2級と2級対策を指導してきた経験から言うと、多くの受験者が苦戦する理由のひとつは、「日常的な英語」から「学術的な英語」への切り替えが求められる点にあります。このギャップを埋めるために設けられた英検準2級プラスは、基本的には英検2級と同じ形式で構成されていますが、使用される英語の内容や語彙は準2級のように日常生活に近いテーマが中心です。このパートでは、2025年夏の試験問題をもとに、英検準2級プラスと準2級・2級を簡単に比較していきます。

・英検過去問・試験内容: https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/
・EIKEN sample exams: https://www.eiken.or.jp/eiken/en/downloads/

リーディング・ライティング

                                                      
英検級 大問1 大問2 大問3大問4
準2級 短文の空所補充 会話文の空所補充長文の語句空所補充長文の内容一致選択問題
準2級プラス短文の空所補充 会話文の空所補充長文の語句空所補充
2級短文の空所補充 会話文の空所補充長文の語句空所補充

短文の空所補充

英検準2級プラスのリーディングの問題は英検2級と同じ構成となっています。しかし、文章の題材の幅と語彙のレベルは英検準2級で扱われるものに近くなっています。 次の表は、2025年第一回試験における最初の2問の「短文の穴埋め問題」について、回答の選択肢を比較し、正解を太字で示したものです。

                               
英検級 第1問の語彙 第2問の語彙
準2級 leisure (B1), network (A2), heat (A2), order (A1) ground (A2), honor (B2), amount (A2), direction (A2)
準2級プラスgained (B2), chased (B2), seated (B2), refused (A2) continued (A2), noticed (A2), judged (B1), searched (A2)
2級civilization (B2), disappointment (B2), proportion (B2), advertisement (A2) permanent (B2), amusing (B2), complicated (B2), uncomfortable (B1)

注:ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR: Common European Framework of Reference for Languages)では、言語能力を 基礎(Basic)段階(A1・A2)、自立(Independent)段階(B1・B2)、熟練者(advanced)段階(C1・C2) の6つのレベルに分類しています。

数字が大きくなるほど、より高度な言語運用能力を示します。日本英語検定協会によると、英検準2級および準2級プラスはCEFRのA2レベルに、2級はB1レベルに相当します。

語彙そのものに注目すると、Oxford Learner’s Dictionary によるCEFRのレベル分けからもわかるように、3つの級の間には明確な難易度の差があります。

特に注目すべき点は、準2級および準2級プラスの正答(太字で示された語彙)はどちらもA2レベルであるのに対し、2級の正答はより高度なB1およびB2レベルに位置しているということです。また、これらの語彙が使われている文の内容にも違いが見られます。準2級および準2級プラスの問題文は主に日常生活を題材にしているのに対し、2級では古代ギリシャのような学術的なテーマも含まれています。

リンク: Oxford Learner’s Dictionary https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/wordlists/oxford3000-5000?dataset=english&list=ox3000

長文読解

次に示す「長文の空所補充」および「長文の語句空所補充」の問題に見られる文章タイプの比較を見てみても、同様の傾向が見られます。なお、準2級の「会話文の空所補充」の問題は、この表には含まれていません。

                                                           
英検級 文章1 文章2 文章3文章4
準2級 Friendship with Mrs. Philip(物語文/空所補充問題)) Subject: An Interview(メール、読解)A Unique Italian Village (ノンフィクション、読解)
準2級プラスA Straw for Clean Water(ノンフィクション/空所補充問題) Olive Oil ノンフィクション/空所補充問題)Subject: Writing contest( メール、読解)Polar Bears(ノンフィクション、読解)
2級The Communication of Elephants (ノンフィクション/空所補充問題) Ifugao Rice Fields (ノンフィクション/空所補充問題)Subject: Questions about school library activities(メール、読解)History of Tea Bags(ノンフィクション、読解)

「空所補充」の文章では、長文の中の空欄に1語または複数の語を入れて文を完成させることが求められます。一方、読解問題では、文章の内容から詳細情報や全体の意味を理解する力が試されます。どちらの問題も選択回答形式で出題されます。

文章の難易度には段階的な差がありますが、準2級と準2級プラスの出題文章は、テーマや難易度の点で非常に似ていることがわかります。一方、2級の文章は、より具体的で学術的なテーマが多く含まれています。実際に準2級および準2級プラスのノンフィクションの読解文は、児童向け科学雑誌のように「わかりやすくトピックを紹介する」文体が多く見られます。一方、2級の文章は教科書に近い形式で、より具体的なテーマが扱われ、受験者が学校や日常生活で学ぶことの少ない内容も含まれます。また、準2級・準2級プラスのメール形式の文章も、テーマや難易度の面で似通っていますが、2級の英文Eメール問題は明らかに高い読解レベルを必要とします。

英作文

                             
英検級 大問1 大問2
準2級 英文Eメール 英作文
準2級プラス英文要約 英作文
2級英文要約 英作文

1つ目のライティング問題で、準2級では「短い英語のメールへの返答」という形式ですが、準2級プラスおよび2級では「短いノンフィクション文の要約」を書くことが求められます。2025年第一回の試験では、両級の文章ともテクノロジーが日常生活に与える影響に関する内容でした。過去の2級の文章では、キャリアプランや職場での状況に関連したテーマも出題されています。文章の長さは、準2級プラスが92語、2級が151語です。どちらの級でも、45〜55語で要約することを求められるため、2級ではより多くの情報をまとめる必要があります。さらに、2級の文章はすべての試験で一定の形式に沿って出題される傾向があるため、準2級プラスの文章も同様の形式になる可能性が高いです。今後、より多くのサンプルテストが公開されれば、対策が立てやすくなるでしょう。

2つ目のライティング問題は、意見論述問題です。質問に対して自分の意見を英作文でまとめる必要があります。以下は、同じく2025年第一回試験で出題された問題です。

                             
英検級 質問
準2級 Do you think it is good for children to decide what time they go to bed every day?
準2級プラスDo you think it is better for people to use plastic bags from stores or to bring bags from home?
2級Some people practice foreign languages with artificial intelligence (AI). Do you think this is a good idea?

準2級、準2級プラスの課題では、日常生活に深く関係するテーマについての意見文(説得型エッセイ)を書く必要があります。これらのテーマは、身近でありながらも、一般的な社会的テーマにもつながる内容です。一方、2級の試験問題は、社会全体の傾向に関するテーマとなっており、効果的に答えるためには個人的な経験を超えた考察が求められます。準2級プラスの語数要件は2級と同じく80〜100語ですが、内容に求められるレベル(深さ・複雑さ)は低いと言えます。

リスニング

                                                  
英検級 大問1 大問2 大問3
準2級 会話の応答文選択 会話の内容一致選択一人語り(モノローグ)の内容一致選択
準2級プラス会話の内容一致選択 一人語り(モノローグ)の内容一致選択
2級会話の内容一致選択 一人語り(モノローグ)の内容一致選択

リスニングセクションでも、英検準2級プラスが2級と同じ形式であることがわかります。準2級では、準2級プラス・2級で見られる内容問題に加えて、「会話の応答文選択問題」が含まれています。いずれの級でも、1つのリスニング音声につき1問が出題され、すべて選択式です。これらの問題では、会話の主題、話者の意図や動機、または会話やモノローグの重要な詳細を理解する力が求められます。比較してみると、準2級と準2級プラスの間にはある程度の段階的な差が見られますが、最も大きな違いが感じられるのは、それらと2級を比べたときです。2級では、使用される英語がより具体的かつ高度になり、設問の中に専門的な語句が含まれることもあります。

二次試験・面接形式のスピーキングテスト

                                                           
英検級 大問1 大問2 大問3大問4
準2級 音読 内容問題
準2級プラス音読 内容問題ストーリーの説明意見を問う問題
2級音読 内容問題ストーリーの説明意見を問う問題

他セクション同様に、英検2級と準2級プラスの面接試験はほぼ同じ形式で行われますが、準2級のみ独自の形式が採用されています。 最初の課題である「音読」では、すべての級で短い英文を声に出して読む必要があります。その後、本文に関する質問が1問出されます。準2級と準2級プラスの英文は、語彙や文構造の難易度が似ており、どちらも日常的な話題を扱っています。一方で、2級の英文はやや高度な語彙やより長い文で構成されており、理解に少し高い英語力が求められます。とはいえ、これらの音読用のテキストは、リーディングセクションで扱われる文章よりもずっと平易な内容にとどまります。

音読とその内容に関する質問の後、準2級の面接では、試験カードに印刷された2枚の絵に基づく質問が2問、続いて意見を問う質問が2問出されます。一方で、準2級プラスと2級の面接では、どちらも3コマの漫画のストーリーを英語で説明するタスクがあります。全体として、準2級プラスの漫画はよりシンプルな内容になっており、模範解答も6文構成とやや短めです。これに対して、2級の模範解答は7文構成で、内容や表現が一段階複雑になります。また、トピックの難易度にも差が見られます。準2級プラスの漫画は「トマトを育てる」という身近で理解しやすい題材なのに対し、2級の漫画は「美術館での託児」といった、社会的・抽象的なテーマを扱っています。加えて、準2級プラスの登場人物は行動の動機が明確に示されているのに対し、2級の方は受験者自身が文脈から意図を読み取る力を求められます。

最後に、3つのレベル(準2級・準2級プラス・2級)はいずれも、受験者自身の意見を2つ問う質問で面接を締めくくります。英検公式サイトに掲載されている準2級と準2級プラスのサンプルカードには、 “Do you think drinks in plastic bottles will be more popular in the future?” という同じ質問が含まれています。したがって、この2つのレベルでは扱うトピックの傾向も類似していると考えられます。ただし、模範解答の内容には明確な差が見られます。準2級プラスでは、「convenient」「avoid」「products」「environment」といった、より高度な語彙が使用されています。さらに、2級の質問と回答への期待値は一段と高く、英作文問題の場合と同様に、自分の経験を超えた視点で考える力が求められます。たとえば、社会全体の傾向や他者の立場を踏まえた意見を述べることが求められるため、抽象的な思考力や論理的な構成力がより重視されるのです。

英検準2級プラス試験対策

英検準2級プラスは導入されたばかりのため、当面は練習教材の入手が難しい状況が続くと考えられます。受験を検討している方は、英検準2級と2級の問題集を組み合わせて活用し、準2級の難易度と2級の試験構成をバランスよく取り入れると良いでしょう。特に注意すべき点として、二次試験は英検2級と同じ形式であるため、準2級プラスの受験者も3コマ漫画の内容説明に備える必要があります。これは、特にこのレベルの受験者にとっては大きな挑戦となる可能性があります。

2025年は、英語能力評価の分野で大きな変化が起こる年といえます。英検に加え、TOEFLの新形式試験も登場しています。これからも英語教育や試験の最新情報について、こちらで随時お伝えしていきます。

この記事の記者

ルケ・ベリボは、帰国子女アカデミーにおいてカリキュラム開発を担当しています。カナダ出身で、英語とフランス語のバイリンガル環境に育ち、成人後に第三言語として中国語を習得しました。2008年にフランスで語学教育のキャリアを開始し、その後、オーストラリアを含む5か国で指導経験を積みました。オーストラリアでは応用言語学およびTESOL(英語教授法)における修士号を取得。専門分野は、言語評価、アカデミック英語、教育理論、カリキュラム設計です。

関連するキーワード


英検準2級プラス 徹底解説

最新の投稿


「英検準2級プラス」を徹底解説:準2級と2級の間に新設された新たな級とは

「英検準2級プラス」を徹底解説:準2級と2級の間に新設された新たな級とは

2025年に新しく導入された「英検準2級プラス(Grade Pre-2 Plus)」についての解説です。この新たな級は、準2級と2級の難易度の差を埋めるために設けられました。他の級との違いや位置づけ、各セクションで出題される内容の特徴、そして効果的な対策方法について詳しく紹介します。


帰国生だけじゃない!英語力で勝負できる中学入試ガイド

帰国生だけじゃない!英語力で勝負できる中学入試ガイド

近年広がる「英語を活かした中学受験」の全体像を解説します。従来の帰国生入試に加え、海外経験のない生徒も受験できる「グローバル入試」が首都圏約140校で導入されています。帰国生入試は海外在住1年以上・帰国後3年以内が基本条件ですが、東京都外の洗足学園や渋谷教育学園幕張などでは柔軟な基準を設定。英語入試の形式は英語+国算、英検スコア活用など多様で、難易度も学校により幅があります。慶應湘南藤沢は一般入試と同レベルの国算を課し、広尾学園は帰国生と同水準の英語力を要求。2026年からは頌栄女子学院も英語利用入試を導入予定。お子さまのバックグラウンドに合わせた入試方式の見極めが重要です。


帰国子女アカデミー第2回中高生対象スピーチコンテストを 東京アメリカンクラブで開催

帰国子女アカデミー第2回中高生対象スピーチコンテストを 東京アメリカンクラブで開催

2025年9月15日、帰国子女アカデミーは、第2回中高生対象スピーチコンテストを 東京アメリカンクラブで開催し、50名を超える熱意あふれる生徒たちが登壇しました。


教室でのVEXロボティクス:保護者のためのガイド

教室でのVEXロボティクス:保護者のためのガイド

VEXロボティックスについての説明とそしてこれがどう子供の学習に向いているのかをFAQも含めて解説してます。


日本におけるニューロダイバーシティとインターナショナルスクール

日本におけるニューロダイバーシティとインターナショナルスクール

インターナショナルスクールは、多文化・多言語・多様な神経特性を持つ子どもたちが共に学ぶ場として、ニューロダイバーシティ(脳の多様性)を実践的に体験できる教育環境を提供しています。 日本でも近年、企業や文化の分野でニューロダイバース人材や障害のあるアーティストの価値が認識され始め、社会全体が「不自由」ではなく「能力」として多様性を捉える方向へ変化しています。 保護者は子どもと日常の会話の中で「違い」を強みとして伝え、互いの多様性を認め合う力を育むことが、未来の社会を豊かにする第一歩となります。