Powered by Global Step Academy    
【ビジョン 2035】第2の柱: 評価制度の改革

【ビジョン 2035】第2の柱: 評価制度の改革

ビジョン2035の始動にあたり、私たちは明確な国家目標を掲げました。すべての高校卒業生が英検2級(またはそれに相当する)レベルの英語力に到達することです。この目標の実現には、単なるカリキュラムの改訂や政策の微調整だけでは不十分です。むしろ、教育者・保護者・政策立案者の間で、「英語が教育の中で果たす役割」そのものに対する意識の転換が求められています。


ゴールから始める:日本の大学入試改革が鍵を握る理由

日本では大学入試こそが生徒の人生に最も影響し、教育におけるゴールといえるでしょう。大学入試に出題される内容に合わせて、高校の最終学年だけでなく、中学校の授業内容が影響を受けることもあります。このことが意味するのは残念ながら、大学入試が変わらない限り、教育システム全体も変わらないという現実です。だからこそ、「ビジョン2035」を実現するためには、大学入試の見直しこそが最も重要であり、最初に倒すべきドミノの1枚なのです。

[ビジョン2035: 日本の将来を見据えた英語能力の向上]

現在、大学入学共通テストにおいては、「読む(Reading)」と「聞く(Listening)」の2技能のみで英語力を評価します。一方で、実際のコミュニケーションで最も重要な「「発信型スキル」である「話す(Speaking)」と「書く(Writing)」は評価の対象外となっています。その結果は予想通りです。学校は授業時間の大半を受動的なスキルに費やしています。なぜなら、それが学生を大学に合格させる鍵だからです。

改革が議題に上がったのは今回が初めてではありません。2010年代には、共通テストにスピーキング要素を加える構想が検討され、試行的な議論も行われました。しかし、計画は実現しませんでした。その理由はよく問題視される、評価の難しさにあります。スピーキングの採点には訓練を受けた人間の評価者が必要であり、評価の公平性、一貫性、そしてコストの問題が避けられません。どれほど厳密にトレーニングを行っても、評価者の判断には差が生じます。さらに、数十万人規模の受験生に対して採点を実施するのは時間もかかり、費用も莫大になります。こうした事情から改革案は立ち消えになってしまいました。

そしてつい最近まで、このまま進展することもないだろうと思われていました。

自動化への転換

機械学習と自動採点システムの進歩によって、かつて大規模なスピーキング・ライティング試験の実施を不可能にしていた障壁が、いま次々と取り除かれつつあります。これらのシステムは、発音・文法・語彙・流暢さ・一貫性などを数秒で評価することができます。さらに、すべての受験者に同一の基準を適用するため、人間による採点に内在するばらつきを減らすことができます。初期投資の費用はかかりますが、一度設計と調整が完了すれば迅速かつ低コストで採点が行えるようになります。

これはもはや理論上の話ではありません。すでに、TOEFL iBTではスピーキングとライティングの採点において、自動採点システムと人間の評価者を併用しています。GMATの分析ライティング評価には、長年にわたり自動採点が導入されています。さらに、Duolingo English Testは完全に機械学習によって採点されており、今では世界中の数千の大学で正式に認められています。

未来への2つの選択肢

日本の大学入試センターには、今後2つの選択肢があります。1つ目は、共通テスト専用のスピーキング・ライティング自動採点システムを独自開発すること。2つ目は、 すでに確立された4技能試験(TOEFL、IELTS、Duolingo、英検など)のスコアを公式に認め、大学入試に活用できるようにすること。

どちらの道を選ぶにせよ、そこには共通の強いメッセージが込められます。それは「発信型スキル(スピーキング・ライティング)が重要である」ということです。

そして、そのメッセージは大学入試改革を超えた影響力を持つでしょう。高校入試においても、スピーキングとライティングを評価対象に含める必要があります。もし中学生が、「競争の激しい高校に進学するためには、これらのスキルが問われる」と理解すれば、発信型スキルに重きを置いた英語学習への意識と準備がより早い段階から始まります。その結果、中学校、さらには小学校レベルから英語教育改革が加速し、学習の初期段階から「発信型スキル」が教育の中心に根付くことになるでしょう。

公平性を保つために

この改革を進めるうえで、最大の課題は「公平なアクセス」の確保です。もし外部の英語試験(TOEFL・IELTS・英検など)を大学入試に認めるのであれば、その受験料が障壁になってはいけません。政府が低所得世帯への補助金や受験バウチャー制度を設ければ、すべての学生が平等に受験機会を得られるようになります。また、試験会場は全国各地に整備するか、オンライン受験を可能にすることで、住む場所による受験地の不足もなくすことができます。

こうした取り組みの見返りは非常に大きいです。OECDの報告やEF英語能力指数など、複数の国際的な調査によると、国全体の英語力が高いほど、 イノベーション・国際競争力・経済成長といった分野で好結果をもたらすことがわかっています。「公正で現代的な英語試験に投資することは、日本の未来への投資でもある」ということです。

1枚目のドミノ

もし「ゴール(=大学入試)」にスピーキングとライティングが含まれるなら、
学校は当然、生徒を話す力・書く力のために指導を始めます。高校が変わり、中学校が変わり、小学校も変わる。そして、カリキュラム・教師の研修内容・生徒の学習の優先順位もすべてその方向に合わせてドミノ倒しのように動き出すでしょう。しかし、その逆は起こりません。

どんなに小中学校の授業を改革しても、大学や高校の入試が今のままなら、変化は定着しません。

試験を変えれば、教育全体が変わる。それが「ビジョン2035」が動き出すための第一歩なのです。

ビジョン 2035 – 基準を引き上げる時

この記事の記者

私たちは、バイリンガリズムが常識となる日本のビジョンを実現しようとする、献身的な教育者、起業家、保護者、関心のある市民のグループです。メンバーには以下が含まれます:KAインターナショナル創設者兼CEOのチャールズ・カヌーセン、GSA CEOのモントゴメリー 道緒、GSA CAOのイワン・フェデロフ。

関連する投稿


KAインターナショナルスクールが日本初のコーウィン・ビジブル・ラーニング認定校になりました。

KAインターナショナルスクールが日本初のコーウィン・ビジブル・ラーニング認定校になりました。

今年、KAインターナショナルスクールは、コーウィンから「ビジブル・ラーニング・スクール」認定を受賞する栄誉に浴しました。日本で初めてこの称号を獲得した学校となります。これは、私たちの学校を特徴づけてきた共同努力、共有された考え方、そして研究に基づく実践への取り組みに対する意義深い評価です。KAインターナショナルスクールでは、学習を可視化することで学習をより良いものにし、最も重要なことに集中できるようになりました。それは、すべての生徒の成長を支援することです。


ビジョン 2035 – 基準を引き上げる時

ビジョン 2035 – 基準を引き上げる時

日本は2035年までに全高校生が英検2級レベルに達する目標を掲げているが、現実は厳しい。6年間英語を学んでも基本的な会話ができない生徒が多く、英語能力の国際ランキングでは92位とアジア諸国に大きく遅れている。根本的な問題は、週1回程度の学習では不十分なことと、英語を「あると便利」程度にしか考えない社会の認識だ。本当の改革を実現するには、教師・保護者・政策決定者が意識を変え、英語を必要不可欠なスキルとして捉え直し、継続的な学習と実践を重視した教育に転換する必要がある。


ビジョン2035: 日本の将来を見据えた英語能力の向上

ビジョン2035: 日本の将来を見据えた英語能力の向上

「ビジョン2035」は、2035年までに日本の全高校卒業生の英語習得を目指す教育改革計画です。人口減少により労働力が縮小する中、英語力向上は生産性と柔軟性を高める重要な手段となります。現在、高校3年生の英検2級合格率は20%強に留まり、多くの学生がグローバル環境で必要な言語能力を持たずに卒業しています。英語力は観光を超えた経済的視野の拡大をもたらし、地方企業の国際展開や学術研究への参加を可能にします。この取り組みは教育格差の解消と社会的流動性の向上にもつながり、日本の文化的アイデンティティを世界に発信する手段ともなります。目標達成には教育者、家族、機関、政策立案者の連携が不可欠です。


【スプリング】小中学生対象!インターナショナルスクールのSTEAMスプリング

【スプリング】小中学生対象!インターナショナルスクールのSTEAMスプリング

東京と神奈川に7校を展開する人気のSTEAMインターナショナルスクール、ローラスインターナショナルスクール オブ サイエンス。毎年すぐに定員に達する人気のスプリングイベントを開講します!


【サマー】インターで留学体験!人気のSTEAMレッスンに英語で参加しよう!

【サマー】インターで留学体験!人気のSTEAMレッスンに英語で参加しよう!

港区にある人気のSTEAMインターナショナルスクール、ローラスインターナショナルスクールオブサイエンス。今年の夏休みも、1歳半から小学生を対象としたスプリングスクールとスプリングキャンプを開講します。この夏はインターで留学体験!英語で人気のSTEAMレッスンを受けてみませんか?


最新の投稿


【ビジョン 2035】第2の柱: 評価制度の改革

【ビジョン 2035】第2の柱: 評価制度の改革

ビジョン2035の始動にあたり、私たちは明確な国家目標を掲げました。すべての高校卒業生が英検2級(またはそれに相当する)レベルの英語力に到達することです。この目標の実現には、単なるカリキュラムの改訂や政策の微調整だけでは不十分です。むしろ、教育者・保護者・政策立案者の間で、「英語が教育の中で果たす役割」そのものに対する意識の転換が求められています。


物語でつむぐ毎日:活字の本で読む、本を「深く」読む力

物語でつむぐ毎日:活字の本で読む、本を「深く」読む力

スクリーンの存在感が増すなかで、本と子どもたちをつなぐのは、以前よりずっと難しくなっています。特に紙の本を好きになってもらうことに悩むご家庭も多いのではないでしょうか。子どもたちは動画やゲームに夢中になって何時間も過ごせるのに、本を手に取ってじっくり読む時間はなかなか続かないものです。では、保護者には何ができるのでしょうか。


アイビーリーグ合格の秘密

アイビーリーグ合格の秘密

子どもをアイビーリーグやその他の有名大学に合格させるには親として何をしたらいいのかという質問に対する私の答えに、多くの保護者の方が驚きます。というのも、親にできることはあまりないし、親が手を出すべきではないというのが私の答えだからです。少し意外に聞こえるかもしれませんが、その理由について説明します。


「英検準2級プラス」を徹底解説:準2級と2級の間に新設された新たな級とは

「英検準2級プラス」を徹底解説:準2級と2級の間に新設された新たな級とは

2025年に新しく導入された「英検準2級プラス(Grade Pre-2 Plus)」についての解説です。この新たな級は、準2級と2級の難易度の差を埋めるために設けられました。他の級との違いや位置づけ、各セクションで出題される内容の特徴、そして効果的な対策方法について詳しく紹介します。


帰国生だけじゃない!英語力で勝負できる中学入試ガイド

帰国生だけじゃない!英語力で勝負できる中学入試ガイド

近年広がる「英語を活かした中学受験」の全体像を解説します。従来の帰国生入試に加え、海外経験のない生徒も受験できる「グローバル入試」が首都圏約140校で導入されています。帰国生入試は海外在住1年以上・帰国後3年以内が基本条件ですが、東京都外の洗足学園や渋谷教育学園幕張などでは柔軟な基準を設定。英語入試の形式は英語+国算、英検スコア活用など多様で、難易度も学校により幅があります。慶應湘南藤沢は一般入試と同レベルの国算を課し、広尾学園は帰国生と同水準の英語力を要求。2026年からは頌栄女子学院も英語利用入試を導入予定。お子さまのバックグラウンドに合わせた入試方式の見極めが重要です。