インター卒業生はどのような進路を歩むのか? 西町編
■インターから京大へ 西町インターナショナルスクール卒業生 川﨑裕さん
東京生まれ育ちで、幼稚部から中等部まで西町に通い、義務教育終了試験に合格。
一般受験で高校は、ICU高校へ進学。ICU高校を卒業後、京都大学経済学部に進学された川崎裕さん。
古文・漢文、音楽、イラストを描くことが好きな川﨑さんのインタビューから西町生の受験と進路にフォーカスしてみました。
インタビューは、西町で日本語教諭として約20年勤務された川﨑さんのお母さんが運営するマリーインターナショナルスクールの教室で行われました。
区元麻布のマリーインターナショナルスクールで川﨑裕さん
お母様の川﨑美智子さんにお話をお聞きしました!
―――タイムズ:(村田):忙しいところインタビューに応じていただきありがとうございます。
実は、今回のインタビューは、「インターの卒業生は、どのような進路を歩むのか?」にフォーカスしたものです。
その第一弾として日英二言語教育のパイオニアである西町インターナショナルスクール(以下西町)の卒業生であり、また、西町の日本語教諭として20年近く勤務された川﨑美智子先生(現在、マリーインターナショナルスクール経営、上記)をお母様に持つ、川﨑裕さんに機会をいただきました。
川﨑さんの場合、幼稚部から中等部まで「西町インターナショナルスクール」で学び、その後「ICU高校」、「京都大学・経済学部」に入学されています。
その進路に西町の特徴が出ているのではないか、と感じます。
ちょっと一般論ですが、多くの場合、インターから日本の学校に入ると文化的な違いに驚く場合があるようです。川﨑さんはいかがでしたか?
川﨑:私の場合、日本の学校というか教育に驚くことはありませんでした。
幼稚部から中等部まで西町に通い、高校はICU高校に行ったのですが、ICU高校は帰国生が多く、さまざまな文化背景の子が多かったです。
いわゆる日本の学校とは少し違う雰囲気の学校でした。
そのため、それほどICU高校の教育に驚くということはありませんでした。
また、高校受験のために地元の学習塾に通っていました。その塾には、インターから通っている子は私だけでしたが、塾の友達もインターナショナルスクールに通っていると知っていましたが、あまり気にしていなかったと思います。
―――タイムズ:西町は、幼稚部から中等部までの教育課程があります。
中等部以降、すなわち高校は、それぞれが進路を選ぶことになります。
同校のホームページでも進路先が公開されていますが、様々な進路に気付きます。
なかでも国内のインターナショナルスクールに進むことが多いようです。
そのなかで、川崎さんが日本の高校に進学しようと考え始めたのはなぜだったのですか?
また、いつ頃から高校受験を考え始めましたか?
川﨑:私が他のインターではなく日本の高校を選んだ理由は、西町の少人数の学校が好きだったことがあります。
そのため、生徒数の多いインターナショナルスクールに魅力を感じませんでした。
高校受験そのものは、中学2年生の終わりに決めました。
学校選択では、父と母と相談し、英語教育などに特徴のあった都立国際高校とICU高校に絞りました。
高校受験を決めてすぐに日本の学習塾に通い始めました。
確か中学2年生の終わりから高校受験のために学習塾に通い始めました。
―――タイムズ:その塾は、なにか特別な学習塾だったのですか?
川﨑:いいえ(笑)。普通の学習塾です。
駅前にあるいわゆる大手の学習塾です。そこに1年ほど通い日本の高校受験対策をしました。
川﨑母:やはり、日本の高校などの情報は日本の学習塾は情報を持っていますし、対策も専門的です。
これは大学受験でもそうでした。
インターから日本の高校へ進学して
―――タイムズ:外国籍の生徒が多いインターから日本の高校に進学して教育文化の違いに戸惑うことはありましたか?
川崎:あまりありませんでした。ICU高校は、生徒の3分の2が海外からの帰国生のため、インターとは違う文化背景を持った生徒が多く通っていて楽しかったです。
今通っている京都大学もそうですが、授業も面白いですし、先生方も研究や学びたい学生など、みんな真剣です。
わからないことを聞きにいける雰囲気などアカデミックな部分と自由な雰囲気がとても好きです。
―――タイムズ:私は、日本のマンモス大学でしたが、とにかく仲良し主義的なものがあまり好きではなくちょっとしんどかった思い出があります。インター出身の方は、独立自尊というかテンポ良く動くことが好きな方が多いように思います。川崎さんは、今の大学の友達関係はどうですか?
川崎:私の場合、今の大学の雰囲気が好きで、そのまますっと入れました。
仲の良い友達との大学生活も好きですし、逆にひとりで動くのも好きです。
そのなかで今は、いろんなグループの友人と出会えることが楽しく、いろんなグループに顔を出して大学生活を楽しんでいます。
―――タイムズ:ちなみにICU高校でも友達関係は同じような感じでしたか?
川崎:ほぼ同じようでした。高校のクラスでインター出身は私だけでしたが、少し日本の高校と生徒構成が違うのでそこが良かったのかもしれません。
帰国生も、フランスやアメリカ、シンガポールなどいろんな国からの帰国生がいました。そのためいろんな文化を体験している友達が多くて、話していて楽しかったですね。
そのなかで、どちらかというと自然と仲良くなったのは、英語で話せる友達だったと思います。
クラスでも、英語やフランス語、中国語など言語でグループが自然とできていたように思います。
そのなかで私は英語が話せる友達と自然と仲良くなりました。
―――タイムズ:ICUらしいエピソードですね。もう少し詳しくICUでの高校生活を教えてください。
川崎:高校生活では、通学が大変でした(笑)。
それ以外では、やはり部活が楽しかったです。
高校1年ではダンス部、2・3年生では演劇部と漫画研究会に入っていました。
高校で演劇部と漫画研究会に所属したことで、大学でも演劇部に入るきっかけになっていると思います。
西町インターナショナルスクールとICU高校の違い
―――タイムズ:ところで西町で楽しかったことを教えてください?
川﨑:季節のイベントが楽しかったですね。
いろんな国の料理を楽しむフードフェアやバザーですね。イベント以外では、6時間目の選択科目が好きでした。
西町はいわゆる部活がないので、日替わりで部活のような授業が選べます。
私は、合唱や演劇、クッキングなどを選びましたが、とても楽しかったですね。
みんな6時間目を楽しみにしていました。
毎年、10月に開催される西町インターナショナルスクールのフードフェア。
在校生の保護者による多国籍な食べ物が並び、人気のイベントです。
―――タイムズ:インターの比較で良く出てくるのが授業の教え方です。西町とICUでは授業に違いはありましたか?
川﨑:そうですね、西町は小学部からの国語は、文部科学省の教科書と教え方(学習指導要領)に則って進めていくためICU高校に入っても国語はあまり違いを感じませんでした。
数学は受験のためにそもそも日本の塾に通っていたので、高校の数学も違和感なく学べましたね。
―――タイムズ:例えば歴史の授業などでは、西町とICUで教え方など違いはありましたか?
川﨑:ICU高校では、日本史を学んだのですが、西町とICUとも違いはあまりなかったと思います。
どちらも中立的な立場で先生方も教えていました。やはり、西町もICUもいろんな文化背景の生徒がいるので、先生も自分の考えではなく、歴史として史実を教えようというのが感じられました。
あえて言うならば、西町の先生は、はやり大使館関係の子供も多かったので、歴史の授業はかなり中立な教え方に配慮されていたと思います。
ICU高等学校 ホームページのスクリーンショット
ICUから次の進路へ
―――タイムズ:高校を卒業してからの進路はどのように考えていたのですか?
川﨑:高校生の時の家庭教師が東京大学の方でした。その先生から聞く東京大学の話などに興味を持って、日本の大学に進学したいと思いました。
私自身、高校の授業の古文や漢文などが好きでした。また、自宅で源氏物語など古文を読んでいたので、自然と日本の大学に行きたいと考えるようになりました。
―――タイムズ:大学は内部進学でICUを考えていなかったのですか?
川﨑:ICU高校の生徒は、付属校ですが、3分の1しかICUに進学できません。
それ以外の3分の2は、他の大学を志願するのですが帰国生が多く、英語教育に力を入れているのでAO入試や指定校推薦で進学する友達が多かったですね。
東京都小金井市にある国際基督教大学(ICU)。地球市民として世界を生き抜くことのできるグローバル人材像を輩出してきました。
―――タイムズ:川崎さんはどうされたのですか?
川﨑:私は、AO入試で都内の私立大学の政治経済学部から合格をもらいましたが、一般受験の勉強も進めていたのでその努力を無駄にしたくないと思い、大学を受けてみることにしました。
―――タイムズ:AO入試ですでに合格していましたが…
川﨑:AO入試の良さはわかるのですが、どこか私の心の中で一般受験に挑戦して結果を出したいという気持ちがありました。
一般受験のための準備もしてきましたし、センター試験を受けて行ける所まで成し遂げたいと考えていました。
インター卒業生とセンター試験
―――タイムズ:センター試験ですが、インター出身だと日本語で設題を読んだり、いろいろ不利ではありませんでしたか?
川﨑:私はそうではありませんでした。日本語は母語ですし、国語は、古文・漢文など好きでした。
センター試験の古文の試験に源氏物語が出題されて嬉しかったのを覚えています。
日本史も好きだったので、苦になりませんでした。その他に数学1、2、生物、地理なども受験対策をしていたので特に問題はありませんでした。
おそらく英語は、満点だったと思います。ちなみにICUの英文法の授業がセンター試験の文法対策になったと思います。
大学入試センター試験 引用Wikipedia
―――タイムズ:センター試験の英語が満点というのもわかりやすいですね。ところで日本の大学入試制度は一発試験に偏り過ぎでおかしいのではと指摘されますが、インター出身の川崎さんはどう考えますか?
川﨑:私にはとても公平な試験だと思います。AOは、自分の他内容をアピールできると有利だと思います。
一般入試は、コツコツ努力を重ねてきたことも評価する試験制度だと思います。
それが大きな問題だとは思いません。
確かに一回だけの試験なので、プレッシャーはかかりますが…。
―――タイムズ:ちなみに京都大学以外に受験された大学はありますか?
川﨑:都内の大学に合格していたので、京都大学以外は受験しませんでした。
センター試験の後、自己採点で京都大学に行けそうだとわかり、京都大学に的を絞り、二次試験を受けました。
二次試験では、論文で自分の体験から考えを述べる時に、西町時代のことから論点を導きだしました。
多文化のなかで自分のアイデンティティをどうするか?という論点などは書きやすかったですね。
でも正直、合格は難しいだろうと思っていました。
川﨑母:全く、無理だろうと考えていました。
―――タイムズ:見事合格だったわけですね。
京都と東京 ふたつの都で学ぶ
―――タイムズ:幼稚部から中等部まで西町に通い、都内のICUで学んで、京都に行くことに不安はありませんでしたか?
川﨑:ありませんでした。むしろ、古文・漢文が好きだったので京都に行けることが楽しみでした。
川﨑母:やはり、日本の古都である京都で学ぶことは素晴らしい経験だと思います。
―――タイムズ:ご両親は、ひとり娘が京都に行かれることに心理的なものは感じませんでしたか?
川﨑母:ないですね。インターは、小学校のときから海外のサマーキャンプなどに参加させるので自然とフットワークが軽くなるのだと思います。
小学校高学年の頃だと思うのですが、一人でアメリカの友人のところまで行かせたことがあります。
高校の2年の時には、5人で模擬国連参加のためにニューヨークに行きました。
さすがにアメリカでは、宿泊先のホテルでは大人がいないとダメなのですが、彼女たちはすごくフットワークが軽いのです。
ジーパンとパスポート、サンダルばきで海外にふらりと行ける。
もちろん、土台に英語があるので世界中へのフットワークが軽いのだと思います。
だから、大学が決まった後も、身軽なまま旅行に行くような感じで京都に行きました。
―――タイムズ:ひとり娘を上京させる悲しみとかあまりないのですね。
川﨑母:そうですね、あまりなかったですね。アメリカに行かれることに比べたら、新幹線で2時間ですから。私たちも京都が大好きなので、やったあ、みたいな(笑)。
インター生の将来の夢
―――タイムズ:京都大学に進学されて、今後、川﨑さんはどのような分野での活躍を考えていますか?
川﨑:大学で経済学を学んでいますが、経営学の分野の方が好きなことがわかりはじめてきました。
それとは違う夢としては、女優さんになりたいと思っています。
大学でも演劇部にいるのですが、演劇をもっと掘り下げていきたいです。
ミュージカルなどもそうですし、最終的に声優になりたいと思っています。
そのために演技を全体的な方向から理解していくことが大事だと考えています。
今は、演劇部で大道具として舞台を作ることも学び始めています。
今後、声優になるために演技と舞台そのものを総合的に習得していきたいと考えています。
―――タイムズ:春休みの貴重な時間をありがとうございました。川崎さんの話で、西町の二言語教育の特徴が進路にも現れていると感じました。
今後、西町に進学したいと考えている保護者、お子さんにとっても貴重な話になったと思います。
ありがとうございました。
■編集後記
今回のインタビューで思い出したのが、以前、インタビューをした西町卒業生です。
その方は、西町で小学部まで学び、私立の中高一貫校に進み、東京外語大学を卒業しました。大学で中国語を専攻したため日本語・英語・中国語と三か国語を自由に操り、通訳としてグローバルに活躍していました。今回、川崎さんの話をお聞きし、西町の日英二言語教育は、国内外に進路を広くとれるのが特徴ではないだろうか、と感じました。
信念を持ちながら、それでいてしなやかな川崎さん。京都で学んだ後、彼女が次のステップに進む時に、あらためて話を聞いてみたいと感じました。
マリーインターナショナルスクール
マリー・インターナショナルスクールは、西町の教員だけで週末だけのインターナショナルスクールとして、日本の学校に通う生徒のために開校されました。
日本人生徒にとって、一番難しく、一番必要な聞き取りを強くするために理科、算数を使って、英語を教える『麻布メソッド』を開発。教員と開発したマリー独自の教科書を使い、しっかり英語が聞き取れることを目指します。
答えが一つで、見れば内容が把握できる自然科学(算数、理科)は、生徒が効いた英語を日本語に置き換えずに、英語をそのまま聞く訓練に最適というのが、麻布メソッドの根幹です。
週末を中心に、放課後に理科・算数を中心に教科を英語で学ぶ授業を開催しています。
各メディアで絶賛されている注目のスクールです。
インターナショナルスクールタイムズの編集長として、執筆しながら国際教育評論家として、NHK、日本経済新聞やフジテレビ ホンマでっかTV、東洋経済、プレジデント、日本テレビ、TOKYO FMなど各メディアにコメント及びインタビューが掲載されています。
プリスクールの元経営者であり、都内の幼小中の教育課程のあるインターナショナルスクールの共同オーナーの一人です。
国際バカロレア候補校のインターナショナルスクールの共同オーナーのため国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了しています。