1967年に創立されたヌエーバは、ギフテッド教育の先駆者として世界に影響を与えてきました。
ギフテッド教育とは、どのような教育なのか。
編集部では、ギフテッド教育についても注目しヌエーバスクールで15年以上に渡り指導にあたってきた川崎由起子氏に執筆をお願いしました。
川崎氏は、京都で生まれ育ち、同志社大学で学んだ後に渡米し、ヌエーバスクールの教員となります。
帰国後、日本を代表するインターナショナルスクールに勤務。
現在、東京ウエストインターナショナルスクールのCOOを務めています。
https://www.tokyowest.jp
▼連載1〜3はこちらをご覧ください。
■総合学習で伸びるギフテッド
ヌエーバスクールは、特に幼稚園児、小学生児童に対して、教科学習よりも時間を費やすのが総合学習です。
教壇経験、そして我が子の経験からヌエーバの総合学習について次のように語ります。
幼稚園の総合学習
娘が5歳で新年度を迎えた時のことです。
学期の始めにみんなのの興味ある分野と勉強したい分野をクラスメートに推薦しました。
クラス全員の前で、なぜその分野を学ぶことが「みんなのためになるか」をスピーチし、その後クラスメートの投票によってトピックが決まりました。
5歳児で既に自分の意見を持ち、それを皆に伝えて皆の賛同を得るというタスクを与えるのです。
ちなみにその年に選ばれたテーマは、「郵便局」でした。
そこから世界中のポストの色や形、郵便物の重さと、配達日数と料金の関係を調べました。
また宛先の書き方が国によって異なることを学び、最終的には地元の郵便局へ行き、実際の仕分け作業を見学しました。
このカリキュラムの後、家族の出す郵便物の宛先の書き方や切手の位置を気にして、間違っていれば注意するようになった5歳児になりました。
小学2年生の総合学習
小学2年生では、「パン」がテーマになりました。
授業では、生徒が自分で調べた世界のパンを地域別にその種類(形、原材料、色)で分類し、それぞれのパンの歴史を発表しました。
その後、その中からパンを作る五感を使った実践授業に取り組みました。
▼ フードマーケットで様々な食品を作り、販売する小学生。公式インスタグラムより。
この授業には、下記の教科学習が含まれています。
理科の先生からパンを作る際にイースト菌の働きを理解。
小麦粉と砂糖などの計量から重さの概念や水の量、割合(パーセント)など算数の学習。
パンの歴史や世界のパンとその土地の気候を学ぶ社会科。
国語で、パンにまつわる歴史の本を読んだり、まとめたりしました。
このように理科、社会、国語、算数が小学校二年生の時点で総合学習になっています。
小学6年生の総合授業
小学6年生では、科学と数学の時間の総合科目として「ソーラーハウスプロジェクト」に取り組みました。
生徒は4名一組となり、自分たちの住むソーラーハウスの建築に取り組みます。
▼ 写真は、小学4年生がダンボールでピンボールやエアーホッケーなど作成し、幼稚園児を招待したインスタグラム。
最大限に光を取り入れ発電させる為の家の設計。
実際太陽の角度を計算して、夏と冬にどれくらいの電力を供給できるのかの供給量の計算。
それに基づいた模型を作りました。
最後にできた模型と地元の電力外車に持ち込み実際に専門家からアドバイスをもらいました。
自分たちが作ったモデルで実際に電力を生み出すのか。
検証の段階で、実社会と専門家からアドバイスを受けることで、社会とのつながりの大切さを学びます。
チーム内でのブレインストーミング、ディスカッション、分析これらの能力はプロジェクトを通じて学んでいきます。
中学生の総合学習
中学校の人文学のカリキュラムに「シルクロード」がありました。
生徒は、シルクロードとはどのような道だったのか。
歴史を遡って、シルクロードがあった国々や言葉、人々が何を買って、何を売っていたのか、を調べました。
▼ 写真は、中学2年生のHumanitiesの授業。公式インスタグラムより。
ある生徒はウズベキスタンのサマルカンドの商人として、調べました。
日本から中国。中国からヨーロッパまで交易路であったシルクロードは、サマルカンドを経由していました。
様々な宗教や文化がサマルカンドを通じて広がっていったことを学びました。
日本、中国と地中海世界の間の歴史的な交易路「シルクロード」。wikipeidaより引用。
最後には自分がリサーチしたシルクロードの人になりきるイベントがありました。
踊り子を選んだ生徒はシルクロードのバザールを想定した会場で当時の踊りを習得し披露します。
サフラン売りの商人となった生徒は、実際に数種のサフランを自分の前に並べ客である保護者や先生に商品説明と販売をしました。
シルクロードに関する学習で、生徒たちは地理、歴史、宗教、考古学、社会学、そして言語、芸術に渡って複合的に学んだのです。
中学生のドラマプロジェクト
ヌエーバではドラマ、演技全般を必須科目としています。
ドラマプロジェクトでシェークスピアを学ぶ際、演劇養成所から俳優や女優、ダンサーなどが出張授業に来ます。
生徒はドラマプロジェクトで、ジェスチャー、表現、声の出し方など基本演技から、ダンス、タップなど習得していきます。
▼ 写真は、小学部の生徒がサンフランシスコの劇場を訪れ、演劇を学ぶ様子。
ヌエーバが育てようとしているのは、グローバルに活躍する次世代のリーダーです。
リーダーは、多くの人前で堂々と自分の意見を述べ、聴衆に語りかけ、リラックスできるように笑いを誘うエピソードなども入れていきます。
真のリーダーシップには、パーフォーマンス能力が必要です。
▼ 写真は、ギリシャ神話の演じる小学4年生。公式インスタグラムより。
ドラマプロジェクトを通し、内気な性格な生徒も人前でうまく話せる経験を積みます。
また、人前で踊ることで自信をつけ、内気な性格でもコミュニケーション能力の引き出しをいくつも作るケースもありました。
発表会の日は学校全体が劇場になり、各教室は、野外ステージも開設されました。
ヌエーバ全体がシェイクスピアに染まる「シェイクスピア・フェスティバル」でした。
インターナショナルスクールタイムズの編集長として、執筆しながら国際教育評論家として、NHK、日本経済新聞やフジテレビ ホンマでっかTV、東洋経済、プレジデント、日本テレビ、TOKYO FMなど各メディアにコメント及びインタビューが掲載されています。
プリスクールの元経営者であり、都内の幼小中の教育課程のあるインターナショナルスクールの共同オーナーの一人です。
国際バカロレア候補校のインターナショナルスクールの共同オーナーのため国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了しています。