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日本におけるニューロダイバーシティとインターナショナルスクール

日本におけるニューロダイバーシティとインターナショナルスクール

インターナショナルスクールは、多文化・多言語・多様な神経特性を持つ子どもたちが共に学ぶ場として、ニューロダイバーシティ(脳の多様性)を実践的に体験できる教育環境を提供しています。 日本でも近年、企業や文化の分野でニューロダイバース人材や障害のあるアーティストの価値が認識され始め、社会全体が「不自由」ではなく「能力」として多様性を捉える方向へ変化しています。 保護者は子どもと日常の会話の中で「違い」を強みとして伝え、互いの多様性を認め合う力を育むことが、未来の社会を豊かにする第一歩となります。


インターナショナルスクールにおける多様性と可能性

インターナショナルスクールの魅力のひとつは、多様な文化・価値観・考え方が交わるコミュニティで学ぶ機会を子どもに提供できることです。単に言語を身に着けたり、将来の国際的なキャリアの足がかりを得るだけではなく、周りの子の「違い」と共に生きる術をを幼いうちから身につける環境でもあります。

多様性のひとつであるニューロダイバーシティという考え方

「ニューロダイバーシティ」とは脳や神経を意味する「Neuro(ニューロ)」と多様性を意味する「Diversity(ダイバーシティ)」を組み合わせた言葉で、個々人の脳の働き方の違いも人間の自然な多様性の一部であるという考え方です。1990年代に入りオーストラリアの社会学者であるジュディー・シンガーによって提唱されました。また、ニューロダイバーシティの当事者の方々を「ニューロダイバージェンス」と呼び、ジュディー氏自身もASDの特徴を持つダイバージェンスだと公表しています。

たとえば、周囲の人とのおしゃべりは大好き!でも、じっと座り続けるのが苦手な子、計算は早くて正確!でも漢字を覚えるのが苦手な子など。このような個性は「多くの子どもに共通する特徴が欠けている」と捉えるのではなく、それぞれの子どもの脳の働き方の違いによる多様性だと捉えます。
保護者向けヒント:違いはあって当たり前という前提で会話する。お友だちやクラスメイトの個性に親子で気づける嬉しさを共有する。

  • 「脳の働き方はみんな違うんだよ。だから得意なこともあれば、苦手なこともみんな違って当たり前。一  緒に学ぶと楽しいね!」
  • 「みんながそれぞれ違うことに気づけて、お互いの違いをを受け入れる機会に恵まれていることが学校生  活の面白さだよ!」
  • 「あなたと違う子がいるの?よく気づいたね!。お互いの違いを学ぶことは、お互いの成長につながる   よ。その子は自分や他の子とどこが違った?その子はどうしてそのような行動をしていたと思う?」

日本におけるニューロダイバーシティの認知度

日本において「ニューロダイバーシティ」という概念が知られるようになってきたのが比較的最近ということもあり、公の場で自らをニューロダイバース(「ニューロダイバーシティ」の一人称)であると名乗る著名人も海外と比べると、まだまだ少ないのが現状です。これは日本に限られた話ではありませんが、ニューロダイバーシティの概念が認知されていないことから、一部の多様性に対していまだに心無い誤解や偏見の目が向けられてしまっていることもまた事実です。

海外ではニューロダイバース人材(”Neurodiverse talent”)と呼ばれる彼らの価値が認識され、積極的に採用する取り組みが始まっていますが、日本も例外ではありません。

例えば、ソニーや富士通ゼネラルでは、ソフトウェア開発やデータ分析の分野で、ニューロダイバース人材が活躍しています。

IT分野に限らず文化やデザインの分野でも動きがあります。クリエイティブカンパニー HERALBONY(ヘラルボニー) は150名以上の障害のあるアーティストと提携し、彼らの生み出す作品を(世界的に有名な)高級(化粧品の)パッケージやファッションにとどまらず、公共空間にも展開しています。これらの作品を知的財産を事業化したビジネスとして2025年にはカンヌ・ライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル において「Glass Lion for Change」を受賞し、芸術を通じてニューロダイバーシティの新しい価値を世界に示しました。海外で高い評価を得たことで国内でも徐々に知名度が上がりつつあります。

「能力」が促す可能性

日本語では身体的な障害を持つ方を表す際に「不自由」という表現が使われることがあります。文字通り「自由が制限されている」という意味で使われますが、当事者の話を聞くと、彼らが置かれている状況は物理的な制限による不自由以上に「社会から向けられる偏見によって追い込まれる立場や心の不自由」と言えることが分かります。

つまり、ここでも「何かが欠けている」と捉えるのではなく、身体的な構造による「能力(Capacity)」の違いによる多様性 として理解することで、どのような障害を持っていても気負うことなく主体的に社会(自身の人生)に関わる可能性を考える機会を得ることができます。

凸凹なの可能性でも社会の柔軟性によって十分自由を得ることはできるのです。特に外見的な特徴として気づきにくい脳の多様性であるADHDや自閉スペクトラム症、ディスレクシアなどのニューロダイバーシティは、彼らの能力を可能性として注目する視点が重要です。

多言語・多文化環境と脳の発達

インターナショナルスクールでは、多言語環境が提供されます。この点に魅力を感じて我が子をインターナショナルスクールに通わせたいと考える方も多いでしょう。複数の言語を学ぶことで脳の神経回路が再構築され、問題解決力、創造性、共感力が高まることが期待できると研究で示されています。

さらに、異なる文化的背景、言語的背景、神経的背景を持つ仲間と共に学び、遊ぶことで、子どもたちの視野や社会的スキルも広がります。

保護者向けヒント:違いに興味を持つことを促すように会話する:

     
  • 「今日のお友達、何が違っていた?どうしてそうしていたと思う?違いを学ぶことはみんなの成長につながるよ。」



インターナショナルスクールが提供する価値と未来

近年、ニューロインクルージョン(神経多様性を包摂する実践) の先導的な立場を目指しているインターナショナルスクールが増えています。柔軟な学習方法を提供し、文化的開放性を育み、すべての子どもが価値ある存在として認められる社会を作る努力を続けています。

まるでオーケストラのように、一人ひとりの生徒が独自の音色を奏で、それが合わさることで、一人では生み出せない豊かな響きを創り出します。

保護者向けヒント : 子どもの強みを伝える会話をする:

  • 「今日、誰か違う考え方をしたお友達から何を学んだ?」など、違いを強みとして捉える会話を促す。



違いを強みに育む教育

ニューロダイバーシティという概念を取り入れた教育は一時的な流行ではありません。障害・才能・可能性の捉え方を根本から見直す考え方です。(日本で)教育の場にインターナショナルスクールを選ぶことは、子どもに「違い」を弱みではなく強みとして捉えて育む機会を提供することに他なりません。自分の「違い」を通じて将来、どのように社会貢献できるか親子で考えることにもつながることでしょう。

この記事の記者

二宮彩は、障害と神経多様性のインクルージョンおよび国際教育を専門とするプライベートインクルージョンコンサルタントです。国内外の学校や教育リーダーに対し、バイリンガルやサードカルチャーキッズを含む複雑なニーズを持つ学習者を支援する方法について助言を行っています。異文化間での豊富な経験を活かし、家庭や教育者が異文化環境での子育てや教育の複雑さを乗り越える手助けをしています。また、日本に住む外国人や駐在員家庭を支援する専門知識を持つ医療・福祉の専門家と家庭をつなぐ新たな取り組みも進めています。

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