日本発の国際教育は、英語圏でどのように評価されているのか?
今回、編集部は日本の国際幼児教育が世界で評価されるのか、また、世界から見た時に日本の幼児教育の特徴を照らしたいと考えました。
日本の教育は、国内から「詰込み型」また「ゆとり」などさまざまな意見が出てきました。
その中で、キンダーキッズのカナダ校の成功は、第三国で日本式の国際幼児教育がどのように評価されているのかを知る機会です。
カナダのオンタリオ州にあるキンダーキッズカナダ校。
世界では、プリスクールのグローバル展開は、急激に増えています。
シンガポールに拠点があるイートンハウスは、アジア12カ国に展開し、東京校もあります。
その中で、キンダーキッズのユニークなところは、日本発の英語で学ぶプリスクールを海外に展開していることです。
キンダーキッズは、日本の幼児教育の良い点を踏まえ、英語で学ぶカリキュラムとメソッドを独自メソッドを構築し、英語ネイティヴに高い評価を受けています。
そこで、編集部は、カナダとアメリカのハワイに海外校を展開するキンダーキッズに注目しました。
2014年の9月にカナダ校が開校したキンダーキッズ
カナダの現地校として開校したキンダーキッズカナダ校。
村田:本日は、お忙しいところありがとうございます。
カナダで2014年に開校され、評判が高まっていることを知り、この度、中山代表にインタビューをお願いしました。キンダーキッズのユニークなところは日本発の国際幼児教育というところです。
国内であれば、保護者の方にキンダーキッズは知られています。
今回、1校目となったカナダでは、どのように生徒の募集をされたのですか?
キンダーキッズの中山 貴美子代表。
キンダーキッズインターナショナルプリスクールを国内外に展開している。
キンダーキッズを始めた理由は、我が子をバイリンガルにしたい、という思いから。
親の気持ちがそこにある。
中山:生徒の募集の前にカナダの幼稚園の認可についてご説明しますね。
カナダの場合、子供を5人以上預かる場合は、教育施設として認可を取らないといけないんですね。
日本では保育でいうと認可と認可外保育施設がありますが、カナダでは「認可外」というのがありません。
そのためカナダで5人以上を預かる施設を作る場合「認可」の申請をします。
実際に認可申請をして通ると認可された「幼稚園」として認められます。
村田:日本のように幼稚園と保育園と許認可で分けられていないのですね。
中山:そうです。キンダーキッズカナダ校は、幼稚園として認可をいただいているので、いわゆるカナダの地元の方が通う幼稚園として開校しました。
運動会も日本式。キンダーキッズは、日本発の国際幼児教育として展開している。
村田:日本では、幼稚園を作ろうとなると学校法人など寄付行為や私財を投じなければいけませんが、カナダは違うのですね。
中山:カナダで小学校を作る場合などはまた違うと思うのですが、日本で幼稚園や保育園を創立する場合、多くの場合「認可」の学校法人や社会福祉法人が創立しています。
現実は、日本のなかで学校法人や社会福祉法人を新規に創立するのは、難しいわけです。
そのため、託児施設が認定保育園などとして増えているのが現状ですが、カナダの場合はそもそも幼稚園、保育園という考えがなく、5人以上は「認可」しかないんですね。
カナダで幼稚園を開校
村田:ちなみにカナダで生徒の募集は、どのようにされたのですか?
中山:カナダで開校するときに「キンダーキッズインターナショナルプリスクール」として開校しました。
実は、英語圏の方には「インターナショナルスクール」というのがあまり理解できないんですね。
例えば、アジアなど英語圏以外のところには、インターナショナルスクールがたくさんあるわけです。
いわゆる「英語で学ぶ」学校として人気ですが、英語圏では逆に「インターナショナルスクール」というのが知られていないんですね。
そのため開校と同寺にすごく注目をされました。
プライバシー保護のために顔写真は、児童によってはカナダ国旗に加工されている。国によってプライバシーの意識も違う。
中山:開校時にいろんなメディアに取材を受けたのですが、理由が「英語の幼稚園が日本から来た」ということで話題になりました。
そのなかで、私たちは日本でオリジナルのカリキュラムやテキストを製作しているのですが、カナダでもまったく同じものを導入しました。
英語圏でインターナショナルプリスクールとして評価してもらえること
中山:私たちが作ったカリキュラムが英語圏でどこまで通用するのか?というところを本当に知りたかったんです。
日本で作った私たちのカリキュラムが、英語ネイティヴのお子さんが学ぶとどうなるんだろう?という気持ちから英語圏でそのままのキンダーキッズとして運営をしたいとずっと思ってきました。
英語圏で日本で作った英語で学ぶカリキュラムを実施するというのは、正直、勇気がいるわけです。
日本のキンダーキッズと同じ教室のカナダ校。
村田:ネイティヴに英語で教える。すごいことですよね。
中山:勇気が必要でした。
海外校ですが、もともとは2011年前後にアジアー韓国やタイ、ベトナムで最初の海外校を考えていました。
そのなかで距離的にも近く海外一校目は、韓国で、と決めました。
しかし、その頃、急に日韓関係が冷え込んで、反日感情が強くなって大変になったんです。
そのなかで「日本から来たインターナショナルプリスクール」というのは受けが良くないな、考えました。
また、韓国ではなくタイやベトナムで英語で学ぶインターナショナルプリスクールが「日本から来ました」という触れ込みで現地に入っていくのとアメリカやイギリス、カナダなど「英語圏から来ました」では、印象が違うのかなと思いました。
例えば、タイにできるインターナショナルプリスクールがカナダから入ってきて、なおかつ日本でも20校も運営している、となると現地の保護者の方にとって安心なわけです。
英語圏で成功したインターナショナルプリスクールの実績を作って、すでに日本に20校あり、それからアジアの国に展開しよう、と思ったわけです。
運動会に向けて組体操を練習するカナダ校の生徒。
村田:なるほど。
中山:またアジアには親日的な国も多いわけです。
なかでも日本の教育は、アジアで高く評価されています。
アジアの方に「英語圏から来たけど、実は、日本で開発されたカリキュラムや手法が高く評価されたインターナショナルプリスクールがやってきた」と思っていただけたらといいなと。
キンダーキッズが成功した理由
村田:キンダーキッズは、日本でも海外でも成功していますが、どのようなところが成功した理由だと考えていますか?
中山:何を持って「成功」とするのか、という部分がありますが、今のところキンダーキッズは、キャンセル待ちなんですね。
そこを成功とするならば、キャンセル待ちになるほどおかげさまで人気になったわけです。
また、カナダに行って驚いたのは、文字を覚える、書くというのが小学校に入って習うのがスタンダードということです。
今、日本で小学校に入る前にひらがな・カタカナが書けないという子は、ほとんどいないわけです。子どもたちは、幼稚園や保育園でも本を読んでいます。
キンダーキッズは、卒園時までに英語圏の小学校2年生レベルまで英語レベルを持っていくのを目標としているのですが、その概念を持って、「年少からABCをやりますよ」というのが国内の富裕層のご家庭に支持されたわけです。
ところが日本でやっているカリキュラムをカナダに持っていくと向こうでは「早期教育」となるんですね。先取り教育になるんです。
そのためカナダ校の卒園児は、小学校に入るとどんどん飛び級をしていくわけです。
そうするとカナダ人の間でも「キンダーキッズで学んだ子どもは、どんどん飛び級をしている」と噂になっていっていきました。
地元の人にも「日本から早期教育のすごい幼稚園が来た」と評判になりました。
移動動物園が園に来るのも国内のキンダーキッズと同じ。
村田:日本から来た英語の幼稚園が英語圏で人気になるのは嬉しいですね。
中山:例えば、算数は日本式で作るわけです。そうするとカナダでは、小学3年生ぐらいのレベルなんですね。
ピアニカの演奏を発表会で披露するカナダ校の生徒たち。
村田:日本人は、それこそ江戸時代から「読み書きソロバン」といわれるくらい勉強熱心ですが、そこが影響しているのでしょうか?
中山:そうですね、例えば英語のアルファベットは、漢字のように難しい書き順などがないわけです。
ところが日本では書き順は、小学校で書き順テストもあるくらい相当しっかり習うわけです。
日本人にとって、漢字の書き順があると文字も上手に書けるし、そもそも安心なわけです。親御さんも笑。
そこで、日本の国語の良さを活かして、キンダーキッズでは英語の書き順も作ったんです。
村田:英語の書き順を日本人が作っちゃう笑。
この春、日本からカナダ校へ初めて生徒が転向した。
中山:そうなんですよ。キンダーキッズでキンダーキッズ式の書き順のある英語の勉強をするわけですが、
外国人の親御さんからするとそこにびっくりされるわけです。
日本では当たり前のように鉛筆の持ちかた、線は左から右、上から下と習うわけです。線の書き方から次にABCとアルファベットの書き方に進むわけです。
日本の幼稚園で文字を習うために当たり前のようにやっていることですが、それを英語の書き順としてカナダで地元の幼稚園としてやったらすごく評判になった笑。
制服も同じ。
中山:日本ではノンネイティヴのお子さんがいかに英語を習得するか、をいろんな手法とアプローチで開発してきたわけです。
ところがカナダでは地元のネイティヴのお子さんが通っている。
日本人向けに英語の「読み書き」のアプローチを開発してきたのですが、ネイティヴのお子さんがキンダーキッズのカリキュラムで学ぶとどんどん単語やボキャブラリー、構文が加速的にアップしていくんです。
親御さんが驚くのが、年長になると宇宙の仕組みや体の仕組みなど日本でも小学校の理科で学ぶ内容を幼稚園でわかるように学んでいることに驚かれるんです。
私たちは、日本で開発したから、ノンネイティヴのお子さんが理解できるように教え方も細かい部分まで理解できるようにマニュアル化しているんです。
それをカナダでやるとネイティヴのお子さんはさらに理解度が深くなるんです。
例えば、「一年経つとどうして年を取るのか」「どうしてカナダが昼の時に、日本が夜なのか」など地球の自転と公転の話ですが、それを英語で深く理解していくんです。
幼稚園で学んだことを家に帰ると子どもたちがお母さんやお父さんに自転と公転の話をするわけです。
そうするとお母さんたちがびっくりしてしまう。
村田:英語ネイティヴがキンダーキッズのカリキュラムで学ぶと知識定着率がさらに高くなるわけですね。
幼児教育は、人格形成が大きい。キンダーキッズのカナダ校から世界で共通する幼児教育が見えて来る。
中山:例えば、日本語で5歳のお子さんに自転と公転を説明しても、「自転と公転」がそもそもわからないわけです。
自転と公転について英語で説明すると英語ネイティヴのお子さんは、すっと理解できるんですね。
村田:日本語母語の生徒に作った英語で学ぶカリキュラムが、英語ネイティヴだとさらに学びが深くなっていくんですね。
連載2回目は、7月下旬に公開予定です。
■こちらも参考にしたいですね。
カナダの23代首相のジャスティン・トルドー。英語とフランス語が公用語のカナダで教師として教壇に立った後、政治の道に進みました。父ピエール・トルドーもカナダ首相を務め、「多文化主義」を進めました。カナダの教育の背景には、多文化理解を進める父ピエール理念が息子ジャスティンに教育として受け継がれています。
東大合格者数No.1の開成で静かに進むIVYリーグ1%の衝撃
http://istimes.net/articles/922東京大学の合格者数で35年以上トップの開成高校。2012年は海外の大学への進学者数は0。しかし、2017年では、その1%が海外の大学に進学していく。東大から海外への流れを2012年以降の同校の公表データからまとめてみた。
【おめでとうISAK!】インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢の第1期の卒業式が開催されました。
http://istimes.net/articles/960インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)の卒業式が開催されました。2008年9月「学校、つくります」という小林りん代表のブログから始まったISAK。国際バカロレアの認定、さらにUWCの加盟とISAKの一期生とともに歩んだ学校に編集部もお祝いします!
インターナショナルスクールタイムズの編集長として、執筆しながら国際教育評論家として、NHK、日本経済新聞やフジテレビ ホンマでっかTV、東洋経済、プレジデント、日本テレビ、TOKYO FMなど各メディアにコメント及びインタビューが掲載されています。
プリスクールの元経営者であり、都内の幼小中の教育課程のあるインターナショナルスクールの共同オーナーの一人です。
国際バカロレア候補校のインターナショナルスクールの共同オーナーのため国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了しています。